がん性疼痛

解説
 日本におけるがん性疼痛(とうつう)に対する考えかたや実際の投薬状況は大きく変わりつつありますが、欧米と比較すると、1日あたりの医療用麻薬の消費量も少なく、いまだに医療用麻薬に対する偏見や誤解が存在するのが現状です。2015年の国際麻薬統制委員会からの報告においても、医療用麻薬の1日あたりおよび居住者100万人あたりの消費量は、先進7か国のなかでは日本がもっとも低く、また世界190カ国のうち、日本は第54位でした。

 その理由として、①医療用麻薬の使用が死の直前を意味するという認識を患者ならびにその家族がもっていること、②医療用麻薬の使用が即麻薬中毒になるという誤解に直結しており、除痛は望むものの麻薬中毒者にはなりたくないという意識が存在すること、③医療用麻薬の使用が寿命を短くし、安楽死に直結しているという誤解があること、などがあげられます。
 これらの誤解や偏見を医療関係者はもちろん、社会全体から取り除くことががん性疼痛対策の第一歩といえるでしょう。がん性疼痛に対しては世界保健機関(WHO)からその治療指針が出ています。なお、現在、日本で用いられている医療用麻薬の代表的なものとしては、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンがあげられます。
コラム

麻薬にかかわる用語

 以下の3つはそれぞれ別々の現象をあらわす用語です。これらの用語の意味を正しく理解すれば、医療用麻薬に対する誤解や過大な恐怖心を取り除くことができると思われます。

□耐性
 反復投与を続けるうちに薬の効果が弱まり、効果を維持するのに増量が必要となる現象を耐性(tolerance)といいます。

□身体的依存
 反復投与によって薬が長い間にわたり作用し続けたため身体機能がその状態に適応し、突然の投薬中止により退薬症候(禁断症状)を呈する状態が身体的依存です。

□精神的依存
 薬の特定の作用を体験するために、薬をとることに強い欲求ないし執着をもつようになった状態を精神的依存といいます。

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