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母子保健をテーマに「グローバルヘルス・アカデミー」第4回を開催 世界銀行の母子保健担当をゲストに迎え、有志一同から、渋澤氏、サラヤ、塩野義製薬、NECが登壇

グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同
官民・民間企業連携がもたらす「母子保健」支援の成果と最新の予防・診断アプローチについて発信

グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同(以下、有志一同)は、グローバルヘルスに寄与するサービスや企業活動への理解促進・関心向上を目的としたプログラム「グローバルヘルス・アカデミー」 (以下アカデミー)」を開催しています。 アカデミー第4回は、有志一同から、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 渋澤健氏、サラヤ株式会社 取締役 代島裕世氏、塩野義製薬株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO 手代木功氏、日本電気株式会社(NEC) Corporate SVP 兼Chief Global Commercial Officer 室岡光浩氏が登壇し、「官民・民間連携がもたらす『母子保健』支援の成果と最新の予防・診断アプローチ」をテーマにプレゼンテーションを実施いたしました。さらに、世界銀行 国際保健・栄養・人口部門代表、元GFF(グローバル・ファイナンシング・ファシリティ)事務局長のモニーク・フレッダー氏を招き、「母子保健とグローバルヘルス」と題した基調講演を実施いたしました。



アーカイブ動画 : https://youtu.be/xWB3lYkONeU

グローバルヘルスとは、地球上の連鎖的な健康リスクの低減に向け、国境を越え、あらゆる場所の保健医療水準を高めることです。昨今、新型コロナウイルス感染症やサル痘の感染拡大を筆頭に、グローバルヘルスに関する国際的な枠組みへの関心が高まっています。各国で政府のみならず、国際機関や官民パートナーシップなど様々な団体によって、課題解決に向けたアプローチがなされています。

有志一同は、感染症対策におけるグローバルサウスの重要性や、母子保健の医療アクセス改善への最新の取り組み・成果を、現地視察等を踏まえて発表。グローバルヘルス領域に対し、「一社だけでなく産官学民が連携することで、より効果的なアプローチを行うことができる。今後も多様なパートナーシップにより、グローバルヘルスを推進していくべき。」と発信いたしました。また、世界銀行 国際保健・栄養・人口部門代表 モニーク氏とともに「グローバルヘルス実現のために“母子保健”は重要なテーマであり、特にアフリカ諸国でのアプローチは急務である」と発信しました。

オープニングスピーチ「有志一同のビジョンと活動紹介」「アフリカの人口増とグローバルヘルス」


シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 渋澤 健氏


グローバルサウス、という言葉は、昨年時点ではあまり聞き馴染みがなかったかもしれません。しかし、日本がG7の議長国になった今年は、岸田総理が年初から取り組むべきであることを述べています。

G7はこれまで、いかにグローバルヘルスへの取り組みが重要であるかを発信してきました。2000年の沖縄サミットにおいても、三大感染症制圧の重要性や、その制圧にG7(当時はG8)が責任を持つべきである、と発信しています。実際に、グローバルファンドなど低・中所得国での三大感染症対策に資金を提供する機関が立ち上がり、世界的な活動も始まりました。グローバルヘルスは、日本にとっても、20年以上外交戦略としても取り組んできた大事な領域です。

G7は、196カ国のうちのたった7カ国のみの集まりであり、世界規模では人口自体も多くないため、見方によってはマイノリティとも捉えられます。一方グローバルサウスでは、人口の増加に比例してGDPのシェアがどんどん高まっています。その中でも、アフリカは特に人口が増加しており、2050年には25%を占めるとも推測されています。

本日のテーマである”母子保健”の領域においては、サブサハラアフリカの子どもは、欧米の子どもに比べて約15倍の死亡リスクを持っています。これらの問題に対し、地球規模でのグローバルヘルスの達成に向けて、企業としてグローバルサウスの人々を支え、答えを出していかねばならないと考えています。

基調講演 「母子保健の改善方法:GFFと世界銀行の役割」


世界銀行国際保健・栄養・人口部門代表 モニーク・フレッダー 氏


GFF(グローバル・ファイナンシング・ファシリティ、以下GFF)は、2015年の創設以来、女性や子ども、青少年の健康と栄養を改善するため、継続的な活動を行っています。これまで、15団体および政府より21億米ドルの支援を受け、母子死亡者数の3分の2を占める38カ国を支援してきました。GFFは“医療再生”や“プライマリーケア”を強化するため、各国の優先事項を考慮し、インパクトの大きい投資を優先して行っています。

母子保健領域は、過去20年で非常に進歩しており、後発開発途上国における妊産婦の死亡率を50%弱減少、全世界における5歳未満児の死亡率を60%削減することに成功しています。しかし、2030年の持続可能な開発目標(以下、SDGs)達成に向けてはまだ課題も残っており、今なお毎日800人の女性が予防可能な病気で亡くなっているほか、毎年500万人以上の5歳未満児が亡くなっています。この数値はウクライナで起きている戦争や気候変動により、悪化していく可能性もあります。

このような課題から、強靭な保健システムをつくるためには、「トレーニングを受けた医療従事者を増やす」、「患者の合併症や緊急事態に対する医療システムの強化」、「政策立案者による最前線のデータに基づいた資源配分や意思決定」が重要だと考えています。特に民間セクターは、医療サービスのデリバリーやイノベーション領域での連携に注目しており、様々なノウハウを持つ民間セクターとの協力は必要不可欠だと考えてきました。

また、日本政府との連携も重要です。現在1.1億米ドルの支援を財務省から拠出頂いているほか、金銭的な支援だけでなくスタッフの提供やテクニカル・ノウハウの提供、イノベーションの活用、さらにはガバナンスにおいても日本の知見が活きています。世界銀行は、様々な国や団体から調達した資金を活かして、保健医療の公平性において大きな進展を遂げています。

SDGsの母子保健に関わる項目については、60カ国がこのままでは達成できない見込みです。GFFは、今年8億ドルのファンディングを世界中のパートナーから調達することを目標としています。これらを活用し、2030年までに2.5億人の女性や子ども、青少年へ支援を提供していきます。GFFは、さまざまなパートナーと手を取り合い、保健システムに投資していくことで、女性や子ども、青少年の健康を守っていくことができると考えており、今後もさまざまなセクターと協力してまいります。

「世界の女性を感染症から守る『SARAYA Safe Motherhood Project』現地レポート」


サラヤ株式会社 取締役 コミュニケーション本部長 代島 裕世 氏


サラヤは、母子保健において重要な性感染症(STI)へのアプローチを行っています。そのきっかけは、2010年よりスタートした『100万人の手洗いプロジェクト』です。ハンドウォッシュ(手洗い)は、予防衛生の基本です。サラヤは戦後間もない1952年に創業し、これまで日本で70年以上感染予防に貢献してまいりましたが、『100万人の手洗いプロジェクト』では、内戦から立ち上がる時期であったアフリカ・ウガンダで、対象となるサラヤの衛生商品の売上1%(メーカー出荷額)を日本ユニセフに寄付し、現地のユニセフ手洗い促進活動を支援しています。

活動を続ける中で、劣悪な状態にある医療機関を視察する機会があり、手洗いの普及活動だけでなく、ビジネスを通じて医療施設の衛生環境も改善したいと考え、2011年には現地法人を設立しました。ウガンダでは飲料用アルコール消費量が世界的にも高く、原料のサトウキビ生産も盛んなため、現地製糖メーカーの協力のもと、ウガンダの自社工場を建設。2014年よりアルコール手指消毒剤の現地生産を開始しています。日本での技術や品質管理のノウハウを生かして生産することで、適正な価格で持続可能なアルコール手指消毒剤を供給することが可能になりました。

そしてさらに、現在はアフリカでの感染症問題にも広く目を向けています。スキンケアブランド「ラクトフェリン ラボ」の売上の一部を公益財団法人ジョイセフに寄付し、ジョイセフが推進する『ホワイトリボン運動』の中のSTI支援活動に活用していただく『SARAYA Safe Motherhood Project』を実施しています。ジョイセフは、ウガンダ現地NGOの「ウガンダ家族計画協会RHU(リプロダクティブヘルスオブウガンダ)」と共同で活動を行っており、現地を良く知るプロジェクトパートナーによって女性たちに支援の手が届く仕組みです。フェーズ1(2018年~2020年)では、手指消毒剤を現地のクリニックに届け、医療従事者に手指の消毒や正しい洗浄方法を伝えるなど、感染対策を促進していましたが、フェーズ2(2021年~2024年)では、性感染症の一つである「子宮頸がん」検査促進などを、ウガンダ・カバロレ県で実施しています。

ウガンダでの女性の死因1位は、子宮頸がんです。ほとんど検査が行われておらず、発覚したときには重症化していて命を失ってしまうこともあります。日本にも子宮頸がんワクチンの接種に関する課題があり、決して遠い国の問題ではありません。

ウガンダは人口の半分以上が15歳未満で、今後さらに労働人口が増えていきますが、教育を受けられない、仕事がないという問題を抱えています。10代後半女性の妊娠率をみると、都市部と地方部でも差があり、地方部のほうが高い結果となっています。10代で妊娠した女性の中には、男性が逃げてしまい経済的に弱い立場のシングルマザーになる人も多いのが現状です。さらに別の男性が寄ってきて2人目・3人目と子どもが増える事例もあります。このような女性への支援においては、感染症予防だけではなく、職業支援など男性に頼らず自立して生きていけるような社会的ポジションへのサポートが必要です。

性感染症の予防において、女性の教育機会や社会進出の機会を創出しなければ、社会的弱者の立場におかれている少女たちのSRHRは実現しません。日本と途上国は同じような課題をかかえており、女性だけでなく、男性もきちんと関与することが重要です。

※SRHR:性と生殖に関する健康と権利。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ

「低中所得国の母子保健支援 Mother to Mother SHIONOGI Project in ガーナ&ケニア」


塩野義製薬株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO 手代木 功 氏


Mother to Mother SHIONOGI Projectは、ビタミン剤の売上の一部をアフリカへ寄付していたところから、社を上げた大きなプロジェクトへ変化しました。キャッチコピーである「日本からアフリカへ。~愛はめぐり、広がる~」には、オールジャパンでアフリカの母子保健を支援しようという思いが込められています。本プロジェクトは、医療アクセスの改善に資する社会貢献活動です。母親と子どもの健康管理を自立的・持続的に行なえるコミュニティづくりを目的に取り組んでおりますが、将来的には、感染症へのアプローチによる経済活動へ繋げていきたいと考えています。

第1期では、2015年から国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンとケニアでの事業を開始し、診療所や給水施設の建設などインフラの整備、教育・啓発、地域支援体制強化等を包括的に進めてまいりました。また本プロジェクトでは、長崎大学熱帯医学研究所との産学連携によってデータを取得し、活動の成果を振り返りながら取り組んできました。その結果、保健施設での出産割合が4%から47%へと約12倍にも増加したほか、産前健診や子どもの予防接種完遂率も改善しており、多くの方々が医療サービスを受けられています。下痢症においても、有症率が3年間で58%減少するなど、支援地の医療アクセスが改善されています。この事業を通して、母子保健について教育を受けた母親が実体験をもとに別の母親へ施設出産が安全で回復も早いという実感を伝えてくれたほか、その体験を身近に見た周りの男性も女性をサポートするようになり、母親の力がコミュニティを動かしていることに気づかされました。

第2期では、インフラの改善を中心に、診療所の地域を広げていきました。当初、電気が通っていなかった診療所では、パナソニック ホールディングス株式会社より太陽光発電システムを支援いただき、夜間診療・分娩やワクチン・薬の電気冷蔵庫での保管を可能にし、医療サービスの質が格段に向上しています。

第3期では、5歳未満児の死因である下痢症の低減に向けて活動しているほか、公益財団法人ジョイセフと連携を開始したガーナでは、妊産婦の死亡率低下に向けてガーナ初の妊婦待機所を新設します。これにより、出産が近づいてきた妊婦は移動の不安なく、安心して出産を迎えることが可能になります。

塩野義製薬としては、私たちがいなくても現地の方のみで母子保健が運用していけるところまで確認し、次のステップに進みたいと考えています。今までの学びやネットワークを活かし、多様なパートナーとともに、それぞれの強みを活かすコレクティブインパクトを通して、母子の健康改善に取り組んでいます。特に医療へのアクセス、衛生環境の改善、子どもの下痢症の低減に今後も社をあげて取り組んでまいります。

「ガーナでの問診サポートアプリを活用した母子の保健・栄養改善プロジェクト」


日本電気株式会社(NEC)  Corporate SVP 兼Chief Global Commercial Officer 室岡 光浩 氏


NECはGaviと連携し、デジタル・ICTを活用した子どもの指紋認証技術を、接種回数やタイミングの把握などが必要なワクチンの本人確認・履歴管理に活用しています。また、2019年からはAIを活用した創薬事業にも取り組むなど、グローバルヘルス領域での活動を進めております。

母子保健のエリアでは、ガーナで妊婦や母子の栄養状態改善を目指し、問診サポートアプリケーションを提供しています。味の素ファンデーション・シスメックス・NECの異業種3者が連携し、WFP(世界食糧計画, World Food Programme)とともに進めているプロジェクトです。味の素ファンデーションの栄養サプリメントと、シスメックスの病院に設置されている貧血やマラリア感染有無を検査できる機器と、トータルで連携しながら母子の行動変容を促し、保健栄養改善に取り組んでいます。

事前に実施したガーナ保健省へのヒアリングにより、母子保健の現状に関する課題が判明しました。母親への栄養教育が十分でなく、子どもの栄養状態にばらつきがあること、母子の検診、指導レベルに差があり、適切かつ継続的なフォローができていないこと、政府が健康に関する情報不足からデータドリブンな意思決定が難しいことなどが挙げられます。

そこでNECは、母子の健康状態の把握や栄養状態への指導を可能にする問診サポートアプリを開発し、保健所スタッフに本アプリを活用してもらうことで、母子の行動変容および栄養改善を目指しています。問診アプリでは検診結果を見える化し、自分自身の健康状態とあるべき姿とのギャップを伝えること、検診後にフォローアップが必要な母子のリスト化、適切なアセスメントの提示等をタブレット上で行うことができます。またアプリの活用がスタッフのスキルアップにもつながるなど、母子保健における課題解決に貢献できると確信しています。

この問診アプリでは身長体重、アセスメント項目の入力のほか、BMI値を自動で計算することや、体重のグラフ化、子どもの成長具合や栄養教育ビデオなどを見ることが可能です。インド ビハール州で糖尿病の予防・早期発見のために開発され、政府のデータドリブンな意思決定にも貢献していたところ、母子の栄養改善へ転用できないかということで、実際にスタッフへヒアリングを行いながら、開発しました。先月には現地スタッフへのトレーニングを実施し、今月から実証実験を開始します。

NECは「No one left behind」というメッセージを掲げて活動を行っています。今後もデジタル・ICT技術を使い、いかに早く的確なサポートや教育サービスを提供し、検査やワクチン接種が受けられる環境を実現できるかということに焦点を当て、グローバルヘルスに取り組んでまいります。

有志一同の公式サイトを新たに公開



サイトURL:https://gh-leaders.jp/

10社を超える有志一同によるこれまでの活動や、指針となるビジョンをまとめた公式サイトを立ち上げました。有志各社の企業ロゴに使用されていないイエローをモチーフカラーとすることによって、「新たな仲間を歓迎する」「グローバルサウスを含む地球のあらゆる場所に光を当てる」という想いを表しています。デザインシステムの設計は、ビジネス・インベンション・ファーム「I&CO Tokyo」が手掛けました。

I&CO Tokyoについて https://iandco.com/
従来の枠組みを超えて新たなビジネスを創出するビジネス・インベンション・ファーム。新しいプロダクトやブランド、「事業の発明」を通じ、世の中にインパクトを与えるPRACTICAL FUTURES(実践的な未来)の創造を目指す。また、企業のパートナーとして戦略・ブランド・デジタルを横断したソリューションも提供している。


「グローバルヘルス・アクション」について
 「グローバルヘルス・アクション」は、世界の保健医療水準を高める国際的な取り組みです。「誰もが必要な医療にアクセスでき、世界中の人々が健康である未来を創る」という大きな目標に向けて、パンデミックの経験を踏まえ、地球上の連鎖的な健康リスクにこれまで以上に目を向ける必要があります。人々の健康は、地球上のあらゆる保健医療と密接に関連しており、アフリカを含むすべての地域での出来事が身近な問題と捉えられます。日本発のイノベーションや官民連携の主体的な取り組みにより、日本は世界の健康を支えるリーダーシップを発揮することができると考えています。有志一同は、「グローバルヘルス・アクション」で3つのことを目指します。
1. 日本が世界の健康を支えるリーダーシップを発揮すること
2. 日本発のイノベーションで世界の健康課題に取り組むこと
3. 世界の課題への取り組みを通じて、日本の医療課題の解決につなげること


グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同について
 渋澤 健(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役CEO)を代表とする、グローバルヘルス(保健医療分野、特に公衆衛生分野、感染症対策分野での支援及び事業)へ貢献する日本企業等の有志団体です。製薬・医療機器をはじめとした保健医療分野のみならず、金融や商社、デジタル、サプライチェーン等多岐にわたる分野から構成され、大企業のみならず中小企業やスタートアップも含めた多様な企業の経営者が参画しています。

2022年12月5日 グローバルヘルス・アカデミー第1回
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000076537.html 

2023年3月29日 グローバルヘルス・アカデミー第2回
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000076537.html

2023年4月13日 グローバルヘルス・アカデミー第3回
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000076537.html
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