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気づかず進行する病気 LEAD(下肢動脈疾患)から足を守る。日本初!LEAD・フレイル研究に関する発表

医療法人社団 恵智会
一般社団法人日本フットケア・足病医学会と医療法人社団恵智会は、足の動脈硬化(LEAD(リード):下肢動脈疾患)とフレイルの関連や重症化のリスク因子を調査・研究するため、5年にわたり歩行・身体機能の経過を追う「LEAD・フレイル研究」の参加者募集を、本年4月にスタートしました。


本研究は、世界でも類を見ない検査数を実施するだけでなく、足の動脈硬化の無症状や軽症者とフレイルの関連を前向き観察研究にて調べる点において、国内初の取り組みとなります。
足の動脈硬化が重症化すると足壊死・切断を起こし、生存率は悪性腫瘍より低いとも言われています。しかも、無症状で経過する方が多く、特に歩行機会が少ない方は症状に気が付かぬうちに最重症に至るケースも存在します。近年、欧米では無症候や軽度の足の動脈硬化の方でもフレイルリスクが高いという報告もあり、兆候を見つけることで早期発見に繋げ、予防をしていくことが大切です。
そこで、生活者の皆様へ、足を守ることの大切さや、LEADがどのような病なのか、また本研究の取り組みについて、医療・健康業界に携わるメディアの皆様のお力添えのもと、情報発信をしていきたく、この度「LEAD」や「LEAD・フレイル研究」に関する記者会見(プレスセミナー)を実施いたしました。
また、糖尿病は喫煙に次ぐLEADのリスク因子でもあり、世界糖尿病デー(11/14)を前に、糖尿病患者さんへのLEAD啓発に繋がればと、本記者会見では、糖尿病とLEADの関係性についてもお話いたしました。

日本フットケア・足病医学会としての社会意義、役割について


(一社)日本フットケア・足病医学会 理事長 寺師 浩人 先生 
(神戸大学大学院医学研究科形成外科学 教授)

はじめに、日本フットケア・足病医学会の理事長の寺師先生より「歩行を守る」をテーマにお話いただきました。
国内では高齢者人口の増加のほか、糖尿病やその疑いのある人(約1000万人)や、透析患者(約35万人)といった、LEAD[i]発症のリスクが高い疾患をもつ患者も増加中であると言われています。そして現在LEAD患者は約400万人(そのうち症状がある方が約100万人)と推定されており、先の疾患と同様に患者数が増加すると推測されています。これまで、糖尿病やLEADの重症化による足の創傷[ii]治療には入院治療が中心でしたが、近年、病床数が削減傾向にある背景からも、外来治療に移行しつつあり、自力歩行(杖歩行を含む自身の力で歩くこと)ができることの重要性が増していると寺師先生は言います。
自力歩行を維持するためには、創傷治療において極力下肢を温存することが大切と言います。寺師先生は、重症下肢虚血[iii]患者切断部位別の術後ADL[iv]変化に関する研究データを紹介し、足趾(あしゆび)や足の長さが1/3までの場合、高い歩行維持率であるのに対し、下腿切断では33%、大腿切断では0%となり歩行維持が困難になることを示されました。さらに糖尿病を患っていてもLEADがなければ創傷治癒後に歩行することが可能である一方で、LEADを有する糖尿病患者は、創傷治癒後の歩行維持率が低下する点にも触れ、LEADが歩行を奪う注視すべき疾患であることをお話されました。
そして、自身が診る患者の1/4は初診時にすでに歩行を失っているという経験から、無症候性LEADの患者は歩行能力の低下に気づいていない可能性があること、LEADの初期段階ではすでにサルコペニアやプレフレイルが始まっているのではないかと指摘されました。
最後に、LEAD・フレイル研究を始め、今後はフットケアやフットウェア、そして日本が誇る救肢の技術の普及を目指し、臨床に即した基礎研究を推進していきたいとビジョンを語りました。

[i] LEAD…下肢動脈疾患、lower extremity arterial disease
[ii] 創傷…傷のこと
[iii] 重症下肢虚血…下肢動脈疾患が重症化し、潰瘍や壊死が2週間以上続いている状態のこと
[iv] ADL…日常生活動作

足の動脈硬化とフレイルに関して


LEAD・フレイル研究ワーキンググループ 研究代表者 東 信良 先生
(旭川医科大学 外科学講座 血管・呼吸・腫瘍 病態外科学分野 教授)

続いては、LEAD・フレイル研究ワーキンググループの研究代表者を務める東先生。LEADや脚の動脈硬化における基礎知識についてご説明いただきました。
全身の動脈はいずれも動脈硬化に陥る可能性があり、脚に起こる動脈硬化を下肢動脈疾患=LEAD(lower extremity arterial disease)と呼びます。LEAD発症の危険因子には、高齢、糖尿病、高血圧、腎機能障害などが挙げられ、国内の発症率は70歳以上で2~5%にとどまるものの、65歳以上の糖尿病患者では12.7%にのぼると言います。LEADは「I:無症状」「II:間歇性跛行[i]」「III:安静時疼痛」「IV:足の潰瘍・壊死」の4つのステージに分類され、症状によって治療が決定されますが、IとIIでは基礎疾患の治療(背景リスクの管理)が特に勧められ、III、IVは血行再建が適応になります。
東先生がLEADの課題と指摘するのは、無症候性LEAD患者の中には、足部の血流が著しく低下しているのに自覚症状がない「潜在的下肢重症虚血」という患者群がいるが重症化予防の手立てがないこと、更に、ステージIII・IVで血行再建が適応になったとしても、術後に歩行能力が回復できない場合、生命予後への影響が大きいという点です。そして近年、LEADの診断基準の1つであるABI検査値の異常(0.90以下)だけでなく、境界型[ii]についても歩行障害発生のリスクがあると報告されていると言います。
無症候性LEADについては研究が進んでおらず、無症状の中でもどんな患者が潜在的下肢重症虚血になるのか、どのような医療的介入によって重症化予防ができるのかなど、解明されていないことが多いと言います。また、血行再建後の生命予後への影響については、筋肉量が関連していると考えられることから、フレイルを予防することでLEADの重症化予防に貢献できるのではないか、あるいは、フレイル予防が予後改善に期待できるのではないかと話します。LEAD・フレイル研究では、無症候性LEADや間欠性跛行患者を対象にすることで、これまで基礎疾患の治療(背景リスクの管理)が中心だったフェーズに対し、新たな予防・治療の可能性を見出すほか、重症化を辿る患者像への理解が深まるデータを蓄積できる可能性があります。東先
生は「歩いて健康寿命を維持することを国民と共有するため、LEAD・フレイル研究が貴重なデータソースになることを期待しています」と今後の展望を述べ、発表を締めくくりました。

[i] 間欠性跛行…歩くと足が痛むが休憩するとまた歩けるようになる症状。血管性と神経性由来があり、LEADは血管性の間欠性跛行を引き起こす代表的な疾患
[ii] ABI境界型…ABI値0.91~0.99のこと。正常値は1.00~1.40、LEAD疑いは0.90以下とされる

LEAD・フレイル研究の概要、現在の応募状況、お問い合わせ方法等


LEAD・フレイル研究ワーキンググループ 研究分担者 河辺 信秀 先生
(東都大学 幕張ヒューマンケア学部 理学療法 学科 教授)
医療法人社団 恵智会 百崎 眞 事務局長

最後はLEAD・フレイル研究ワーキンググループの研究分担者である河辺先生と、医療法人社団 恵智会の事務局長を務める百崎氏から、LEAD・フレイル研究の概要などについて発表されました。
河辺先生からは、LEAD・フレイル研究の概要についてお話があったほか、現在の応募状況についても発表がありました。研究参加希望者316名に対しABI測定を行った結果、正常値が88%、境界型が5.7%、異常値が5.7%であり、疫学データと類似した結果を得ていると報告しました(集計期間2023年4月~10月末)。また、LEAD危険因子の割合は、境界型の方では、喫煙歴(28%)、糖尿病(17%)、高血圧(44%)、脂質異常症(50%)であり、異常値の方では、喫煙歴(50%)、糖尿病(67%)、高血圧(83%)、脂質異常症(44%)であったことから、改めて生活習慣病や喫煙歴のある方にLEADについて警鐘を鳴らすと共に、LEADとフレイルの実態解明のため一人でも多くの方に研究参加をお願いしたいとお話されました。
百崎事務局長からは、研究への参加方法について案内を行い、応募は電話またはWebにて受け付けていること、ABI検査を受けたことがない研究参加希望者には無料でABI検査を行っていることなど案内を行いました。


ご参考


LAED・フレイル研究に関する医療者向けHP
https://survey.qlifeweb.jp/lp/leadfrail/research


LAED・フレイル研究に関する一般の方向けHP
https://survey.qlifeweb.jp/lp/leadfrail/candidate

■一般社団法人日本フットケア・足病医学会について
一般社団法人日本フットケア・足病医学会は、足に関するあらゆる疾患(足病)に携わる専門職種・業界が結集し、足病に対するフットケア、予防、診断、治療、教育、研究および技術の向上や標準化を図り、当該分野における医療を確立・普及させ、専門的知識の啓発および学術の発展に寄与することを目的として活動しています。

■医療法人社団恵智会について
恵智会では、エビデンスに基づいた医療をもとに、抗老化、慢性疾患やフレイルなどの発症予防・重症化予防・再燃予防の取り組み、再生医療の研究・推進をしています。
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