70年代から続く角層研究の成果を詰め込み、角層細胞の「うるおい」まで証明できる究極の1本を。科学的根拠に基づいた角層解析の技術イノベーションストーリー

秋冬の空気の乾燥、夏のエアコンによる乾燥など、年間通して肌にダメージをもたらす「乾燥」。スキンケア商品の多くに「保湿」「うるおい」といった文言が見られるなど、肌の保湿は昔からスキンケアの基本として重視されてきました。なかでも化粧水は多くの人がルーティンに取り込んでいるスキンケアステップということもあり、より強い関心を集めています。


化粧水に関して、保湿を求める声が多くある一方、「どの化粧水を選べばいいのかわからない」「うるおいが持続する化粧水と出会いたい」と感じている方もいるのではないでしょうか。そこで花王が目指したのは、これまでの花王の知見を詰め込んだ、角層細胞までうるおい続ける“究極の1本”を開発することです。また、科学的根拠を大切にしたいという想いから、角層細胞のうるおい状態の可視化にも挑みました。スキンケア研究所(以下、スキンケア研)の森川さん、うるおい状態の可視化に挑んだ解析科学研究所(以下、解析研)の内藤さんに、今回の挑戦について話を聞きました。





「どの化粧水を選べばいいのかわからない」

 “化粧水迷子”に究極の1本を届けたい


花王の角層研究の歴史は、70年代にまで遡ります。保湿はスキンケアにおける基本的な要素であり、昔から一定のニーズがありました。森川さんは「肌悩みの多くは保湿不足も関わっているというのが個人的な思いです。事実、昔から保湿技術に特化したスキンケア製剤の開発が他社含めて行われてきました。」と語ります。


また、保湿目的のスキンケア商品が多い背景には環境の変化もあります。専業主婦が多かった時代を経て、外で働く女性が増えたことにより、日中の日差しを浴びる時間が増えたほか、オフィスの空調にさらされやすくなったことも環境変化のひとつ。気候変動による気温の上昇、空気の乾燥も、肌に影響を及ぼしている要因だといえるでしょう。




そもそも、うるおっている肌はどんな肌なんでしょうか。森川さんは、「専門的な話になってしまうのですが、うるおいが保たれている肌は構造が整っています。その構造で重要なのがケラチンというタンパク質と細胞間脂質です。」と説明します。


化粧品のCMや雑誌などで、「角層」という言葉を耳にしたことはある人が多いでしょう。

角層を構成する角層細胞同士の間には、細胞間脂質という脂質があります。角層をレンガ塀に例えるならば、角層細胞はレンガに、細胞間脂質はレンガ同士の間を埋めるセメントに例えることができます。細胞間脂質を構成しているのはセラミドや脂肪酸など。一方、角層細胞を構成している主なタンパク質がケラチンです。


「ケラチンは水分を抱える役割を担っていて、水分を逃がさないようバリアの役割を担っているのが細胞間脂質です。水を抱えたケラチンは角層細胞内に均一に分散し、バリア機能を持つ細胞間脂質はラメラ構造と呼ばれる脂質の層と水分子の層が何層も重なりあった構造になっています。」(森川さん)


乾燥した肌は、ケラチンがギュッと縮こまった状態になり、細胞間脂質のラメラ構造が乱れています。このケラチンに水を抱えさせ角層細胞内にしっかりと分散していること、ラメラ構造を整え、脂質と水分子の層が交互に規則正しく並んでいることがうるおった肌に重要なことなのです。





では、ユーザーはどのように化粧水を選んでいるのでしょうか。花王が2022年8月に行った調査では、化粧水に期待したいもののうち、「うるおいを補うこと」「うるおいの持続」と保湿に関連したものが上位を占めました。肌のケアのために化粧水で保湿することは重要であるという意識が根付いている一方、「選び方がわからない」と答えた人が一定数いたこともわかりました。


「およそ6割が『どう選べばいいのかわからない』、いわゆる迷子層だったんです。保湿された感覚が足りず、重ねづけしている方が多い実態がわかり、うるおいを体感していただける化粧水を作りたいと思いました。そこで、肌の角層細胞までうるおいつづける化粧水をつくりたいという強い想いのもと、従来の自社化粧水を超える技術開発に取り組みました。」(森川さん)





角層細胞までうるおいつづける。

ケラチン保水技術&セラミド機能成分による保湿技術を、化粧水1本で実現


今回、花王が挑戦したのはケラチン保水技術&セラミド機能成分※を化粧水だけで実現する技術開発です。従来、花王のスキンケアにおいてはセラミド機能成分※を配合しているのは乳液であり、この乳液の機能をケラチン保水技術を持つ化粧水に含めることで、未だかつてない化粧液ができると考えたと森川さんは説明します。

※セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド


「花王はこれまで水分保持機能のはたらきを補うセラミド機能成分※の開発に取り組んできました。このセラミド機能成分※は非常に結晶性が高く、水にも油にも溶けにくい性質を持っているんですね。そのため、化粧水への配合が非常に難しいんです。」(森川さん)


その困難を打破するきっかけとなったのが、花王が15年ほどかけて開発したマイクロ流体技術です。この技術によりセラミド機能成分※を細かくすることで、非結晶化の実現に至りました。



「マイクロ流体技術によるセラミド機能成分※の非晶化技術は既に確立されていましたが、ケラチン保水技術と組み合わせるのは想像以上に大変でしたね。」(森川さん)


今回の技術開発では、セラミド機能成分※を配合するだけではなく、さらにアクアセリンという成分もプラスされています。アクアセリンは、低湿度環境下でも高い水分保持能力を持つ成分。花王が昔から大切にしてきた保湿成分であり、「ぜひとも加えたかった」と森川さん。


「本当に保湿効果を感じていただける究極の1本を作りたい。その一心でしたね。アクアセリンも、単純に加えればいいわけではありませんでした。今回はマイクロ流体技術を活用するという特殊な作り方をしているため、安定性の面で通常とは異なる課題があります。そこに別の成分を加えるとなると、不具合が起こりやすいんです。すべての技術を両立させ、安定して配合するのは非常に難易度が高く、これまでで最も困難な技術開発といっても過言ではありませんでした。数百回は試作を行いようやく実現させることができました。」(森川さん)


細胞レベルのうるおい状態を可視化。解析研の挑戦


森川さんたちにより作られた技術により、本当に肌にうるおいがもたらされるものなのかどうか。科学的な根拠を見出すため辿り着いたのが、解析研の内藤さんが担当した角層細胞のうるおい状態の可視化技術です。


花王の解析研でレジェンドとも呼ばれる、分析歴30年のキャリアを持つ内藤さん。スキンケア製剤だけではなく、入浴剤など、「うるおい」を課題とするさまざまな製品が影響を与える肌の水分量を分析してきました。





今回、森川さんから求められたのは「細胞レベルのうるおい状態の可視化」です。そこで選ばれたのは、化学組成をミクロレベルで見る顕微鏡。

「錠剤内の薬剤の分布を見るために使われるなど、肌の解析には普通は使われない顕微鏡です。化学組成の分布という視点で商品開発に役立てたいと思って導入した装置でした。それを使っていくなか、今回『角層細胞レベルでうるおい状態を見たい』という話があり、この顕微鏡が使えるかもしれないと思ったんです。」(内藤さん)





本当は「生きている人で角層細胞スケールを見たかった」という内藤さん。しかし、直接人体から解析をするのは、動いてしまうため難しく、肌表面をテープで剥離し採取した角層細胞を解析することにしたのだといいます。


しかし、テープの材質によっては解析の邪魔をしてしまうことがわかりました。試行錯誤の結果、行き着いたのは高温や薬品にも強い実験室用の特殊テープです。そのテープを使った上で、テープが発する信号を取り除くことで角層細胞の信号を読み取ることを成功させました。さらに、水分量の絶対値を取り出すための計算にも工夫を凝らし、角層細胞レベルで肌のうるおい状態を可視化させたのです。




「過去の技術に最新の成果を組み合わせたことで、綺麗に結果のグラフが出ました。」と内藤さん。驚いたのは、試験製剤を塗布した直後ではなく、4時間後のほうが角層細胞のうるおい値が高かったことだといいます。



「塗った直後に値が上がるのは当然です。今回の試験製剤は、そこから下がるまでの時間が長くなり、じわじわと下がっていくものだと予想していたんですよ。しかし、解析してみたところ、直後よりも4時間後のほうが数字が上がった。しかも、その後8時間後でもうるおいが高いレベルで維持できているという結果に。これは要するに、時間をかけて角層細胞へ浸透した様子を数字で表せられたということ。『なるほど、これが浸透したということか』と気付きました。」(内藤さん)







解析研究所による結果を見て、森川さんは「素直に嬉しかった」と感想を述べます。

「角層細胞をうるおった状態にしたいという夢が叶いました。科学的根拠をもって『うるおいをもたらす技術です』と言えるのは非常に嬉しいですね。」(森川さん)


今後も科学的根拠に基づいた技術開発を


今回の取り組みに対し、内藤さんは「普段から森川さんたち他研究所の人と会話する関係性があったからこそ、タッグを組んでの取り組みができました。」と語ります。






「解析研は裏方の立場であり、お客様にもあまり知られていません。花王の技術開発、商品開発は、サイエンスに基づいたものであり、科学的根拠の裏付けにもこだわって行われていることを知ってほしいとあらためて思いました。今後は解析研が出した結果をもっと知ってもらえるようにするといった取り組みにも力を入れられたらと思います。」(内藤さん)


究極の1本を作り上げた森川さんは語ります。

「今回は肌の乾燥にフォーカスした技術開発を行いましたが、今後もお客様の不満や悩みを掘り下げ、寄り添う商品開発に取り組んでいきたいです。」(森川さん)





森川優輝さん

花王株式会社 2018年入社。

スキンケア研究所 化粧液担当

入社以来、ソフィーナのスキンケア製品開発に従事。




内藤智さん

花王株式会社 1991年入社。

解析科学研究所 上席主任研究員/理学博士

入社以来、解析研究に従事。




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