教えて!けいゆう先生

医師から患者になり、初めて知ったこと
手術受け分かった不安、立場の違い

 ◇手術後はとにかくつらい

 私たちは普段患者さんに、手術後はしっかりリハビリをするよう指導します。病状によっては安静にすべきケースもありますが、全身状態が許せば、術後は積極的に動いていただきます。こうした術後のリハビリが、回復を早めるためには非常に重要だからです。

 私は、術後ベッド上でじっと寝ている患者さんには、「もっと歩いてください」と少しスパルタな指導をしていたこともありました。ところが自分が手術を受けると、印象が大きく変わりました。

 とにかく術後は全身がだるくて重く、起き上がるのも一苦労です。スムーズに歩くなどとても無理で、フラフラになりながらリハビリをしました。手術翌日からスタスタと病棟を歩いている高齢の患者さんがたくさんいたことを思い出し、改めて感心しました。

 手術後はとにかくつらいことを十分認識し、その上で適切な言葉をかける必要があると分かりました。

 ◇ナースコールを押すのは気を遣う

 私は患者さんにいつも、「何かあったらナースコール押してくださいね!」と軽く言っていたのですが、自分が入院すると、そう簡単でもないことに気づきました。入院中はささいな不安や看護師への用事が出てくるのですが、看護師たちが忙しい中、「こんなことでコールしていいのだろうか」と思ってしまうのです。

 たくさんの患者さんの相手をしなくてはならない看護師たちに、自分のところに来てもらうにはそれなりの理由が必要だと考えると、ナースコールを押すことへの敷居は高くなります。もちろん「何のためらいもなくナースコールを何度も押せる患者さん」はたくさんいます。これは個人の性格の違いです。

 しかし、中には控えめな性格の人もいて、「ナースコールを押したいけれど遠慮して押せない」という人が多くいる可能性に気づけたのは、大きな成長だと感じます。それぞれの患者さんの性格に応じて、適切なケアは違うと実感できたからです。

 医師は、何百、何千という患者さんを相手にする中で、患者さんへの診療が当たり前の行為になっています。しかし医師として、患者さんの立場で物事を考えることがいかに大切かを、入院することで身にしみて学ぶことができました。

 これを読む医療者の方々にもぜひ、こういう患者さんの立場を分かっていただけるとうれしく思います。


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