治療・予防

鑑別しにくい難病=ミトコンドリア病-
新薬開発が進行中

 ミトコンドリア病は、体内の細胞で必要なエネルギーを作り出すミトコンドリアに異常が生じ、心臓や骨格筋、神経の機能が低下する難病だ。治療法は対症療法が中心だが、新薬の開発も進んでおり、一筋の光も見えている。千葉県こども病院(千葉市)代謝科部長の村山圭医師に、病気の特徴や治療法、新薬の開発状況などについて聞いた。

小児ミトコンドリア病の臨床診断

 ▽さまざまな臓器に異常

 ミトコンドリア病になると、体の設計図であるDNAに変異が生じ、ミトコンドリアの働きが悪くなる。ミトコンドリアは各臓器の細胞にあり、どの臓器で異常が起きるかによって症状は異なるが、大量のエネルギーを必要とする脳や筋肉などに症状が表れやすい。

 国内患者数は5000人に1人と推定される。2009年に国の指定難病になり、認定患者数は約1400人。

 村山医師は「把握できている患者数は少な過ぎる印象があり、実際にはその10倍以上と考えられます。診断されていない潜在患者が多いとみられ、特に糖尿病患者の1%はミトコンドリア病との関連が疑われます」と説明する。

 幾つかの病型に分類されるうちで最も多いのがミトコンドリア脳筋症(MELAS)で、学童期に急激な意識障害や筋力低下、脳卒中発作を発症するのが特徴。患者数でミトコンドリア脳筋症に匹敵するリー脳症は、乳幼児期にけいれん、精神運動発達遅滞、筋力低下などが見られる。新生児・乳児ミトコンドリア病は、2分の1が生後1年以内に死に至る重篤なタイプだ。

 この病気は母親の遺伝子が子どもに受け継がれて発症する母系遺伝のみである、との誤解があるが、村山医師は「発症するのは母系遺伝とは限りません。確かにミトコンドリアDNAは母親から子どもへ伝わるので母系遺伝する場合もありますが、実際は両親から受け継がれる核DNAの異常による発症の方がはるかに多い」と強調する。

 ▽進む治療薬の開発

 治療法は、薬で発熱やけいれん、高血糖を抑えるなどの対症療法が中心だ。だが、村山医師によると、近年、製薬企業や医師主導の臨床試験が進められているという。ミトコンドリア脳筋症の脳卒中発作の治療と予防を目的とするタウリンやアルギニンの使用が検討されており、さらにミトコンドリアの機能低下により発生する酸化ストレスを除去する新薬(開発コード・EPI―743)や、ミトコンドリアの酵素自体を強化する薬(同・5―ALA)などが開発中で、より効果的な治療法の登場が期待されている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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