治療・予防

進行を予測する指標発見
~間質性肺炎の早期治療で(大阪大学大学院 榎本貴俊医師ら)~

 間質性肺炎は、肺が厚く硬くなる「線維化」により、血液中に酸素が取り込まれにくくなり、せきや息苦しさが現れる病気だ。大阪大学大学院医学系研究科(大阪府吹田市)呼吸器・免疫内科学の榎本貴俊医師と武田吉人准教授らの研究グループは、血液検査間質性肺炎の進行を予測するため、血液中に含まれるタンパクが新しいバイオマーカー(指標)として有用であることを確認した。

間質性肺炎リスク患者を早期に特定

 ◇着替えでも息切れ

 間質性肺炎が進行すると、着替えなどの軽い動作でも息切れがする。大まかに5種類に分かれ、さらに細分化される。

 命に関わるタイプの治療としては、線維化の進行を抑える飲み薬が中心。「早めに治療を開始しなければなりません」(榎本医師)。現行の胸部の画像検査や血液検査では正確な進行予測は難しく、「半年から1年程度、経過を観察してから進行が速い人に薬を使うことがほとんどです」(同)。

 ◇早期治療の判断に

 榎本医師らは新規バイオマーカーとして、血中の小さなカプセルのような細胞外小胞「エクソソーム」に着目した。「大きさはナノ(10億分の1)メートル単位で、細胞と細胞の情報伝達に関わるとされています」

 タンパクを網羅的に解析する技術を駆使し、エクソソーム中に含まれる2000種類以上のタンパクを特定。その一つ、「肺サーファクタント タンパクB(SP―B)」が線維化進行を予測することが分かった。SP―Bは肺の膨らみを保持するタンパクの一種で、その機能が十分にない物がエクソソーム中に増えることが、線維化の進行と関連していた。

 SP―Bは、従来のバイオマーカーよりもリスクの高い患者の早期発見につながることが分かった。武田准教授は「エクソソーム中のSP―Bが高値なら、早期に抗線維化薬を開始することのメリットは大きいでしょう」と話す。今後、実用化に向けて研究を続ける予定という。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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