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国立感染症研究所の報告によると、2017年の梅毒の感染者が44年ぶりに5000人を超えた。中でも20歳代を中心とした女性の感染が増加し、それに伴い胎児が感染する先天梅毒も増加傾向にあることが分かった。「先天梅毒を予防する重要性が高まっています」と大阪母子医療センター(大阪府和泉市)産科の林周作副部長は警鐘を鳴らす。
早期治療が子どもへの感染予防につながる
▽死亡のリスクも
梅毒は、梅毒トレポネーマという病原体によって引き起こされる感染症だ。主に性行為で感染するため性感染症の一つとして数えられる。全身の発疹、陰部の潰瘍、発熱、全身のリンパ節が腫れるなどの症状が表れる。
先天梅毒は梅毒に感染した母親から胎児へと感染するもので、母親が治療を受けていなければ胎児の約40%が死亡するという重篤な病気だ。無事に生まれても、2歳になるまでに発疹、リンパ節の腫れ、血液の混入した鼻汁などが見られ、全身のけいれん、関節部分の軟骨の表面に亀裂や変性が生じる骨軟骨炎、発育障害などの症状が表れる。学童期以降に、角膜炎や難聴などを発症することも少なくない。しかし、症状だけで先天梅毒を疑うことは難しく、適切な時期に診断ができず、治療が遅れる場合がある。
▽妊娠中の感染にも注意
林副部長は「通常、妊娠12週までの妊婦健診時に、母親が梅毒に感染していないか血清検査が行われます。感染が分かれば、抗菌薬を服用して母親の梅毒を治療します。妊娠16~20週に完治すれば、胎児への感染を高い確率で防ぐことができます」と説明する。
治療が遅れたり治療を受けなかったりして胎児への感染が疑われる場合は、出生時に検査を行う。感染していれば新生児に抗菌薬の静脈注射が行われる。
13年以降、男女ともに梅毒感染者は増加している。その背景には、梅毒の初期症状は治療をしなくても自然に治ってしまうため、その症状を深刻に捉えずに未受診のまま過ごしている人がいることが考えられるという。
林副部長は「梅毒は妊娠中でも感染します。先天梅毒をゼロにするためには、妊娠初期の梅毒検査に加えて、妊娠中の感染予防と早期診断が必要です。性行為では男性用避妊具を使用し、陰部のしこりやリンパ節の腫れに気付いたときには産科医に相談することが大切です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/09 11:00)
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