治療・予防

血球が減少する難病-再生不良性貧血
新薬の登場で輸血不要の例も

 骨髄の中で血液をつくる造血幹細胞が減少することで、血液中の白血球、赤血球、血小板といった血球が少なくなる再生不良性貧血。国内の患者数は約1万1000人で、国の指定難病となっている。この病気の特徴と最新の治療法について、NTT東日本関東病院血液内科(東京都品川区)の臼杵憲祐部長に聞いた。

再生不良性貧血の症状

 ▽長期生存が可能に

 再生不良性貧血は先天性と後天性に分けられるが、成人の再生不良性貧血のほとんどは後天性だ。薬剤や化学物質などが原因で発症するケースもあるが、多くは原因不明である。臼杵部長は「免疫の異常により、本来自分を守るはずのTリンパ球が誤って自分の造血幹細胞を攻撃してしまい、血液が再生されにくくなると考えられています」と説明する。

 主な症状として、息切れ動悸(どうき)めまい、だるさなどの貧血症状と、感染症に伴う発熱、皮膚の点状出血鼻出血、歯肉出血といった出血傾向が表れる。治療せずに放置すると、重症化してしまい、自ら血液を再生できなくなるため、早期診断・治療が重要となる。

 「かつては、治療により造血機能が回復した患者さん以外は長期生存が難しく、重症患者の約半数が半年で亡くなるといわれていました。現在は、感染症に対する抗生物質のほか、輸血などの支持療法の進歩などもあり、完治できないケースでも90%近くで長期生存が期待できます」と臼杵部長。

 ▽造血機能を回復させる新薬

 病気の重症度は、血球の減少の程度や必要となる輸血の頻度により5段階に分けられる。この重症度や年齢に応じて治療法を選択する。

 治療法には、シクロスポリンなどの薬による免疫抑制療法や完治を目指す造血幹細胞移植といった造血機能の回復を目指す治療と、さまざまな症状を抑える輸血などの支持療法がある。

 2017年には25年ぶりの新薬として、既存治療で効果が十分得られない患者に使用できる「エルトロンボパグ」が登場した。この薬について、臼杵部長は「詳細な作用メカニズムは不明ですが、血小板だけでなく、赤血球や白血球などにもなる造血幹細胞自体を増やす薬剤です。免疫抑制療法が効かず、輸血の対象となる患者さんの約4割に効果があります。投与中止後も造血が維持されて、輸血が不要になる患者さんもいます」と評価する。

 その上で、臼杵部長は「長期使用による効果や安全性についてまだ十分に検証されたとは言えず、慎重に使用すべきです」と指摘する。有効性の高い治療薬が選択肢に加わったことは、患者にとって朗報といえるだろう。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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