治療・予防

高齢者で増えている骨髄炎
脚にしびれやまひ

 骨の中にある骨髄という軟らかい組織に細菌が感染して炎症を起こす「骨髄炎」。かつては子どもの病気と考えられていたが、近年、高齢者にも発症例が増えている。初期のうちは見過ごされることが多く、気付いた時には骨がつぶれる、まひが表れるなど進行していることも少なくない。骨髄炎の原因や治療法などについて、国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)の副院長で国際感染症センターの大曲貴夫センター長に聞いた。

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 ▽背景に免疫力の低下

 骨髄炎の原因菌で最も多いのは黄色ブドウ球菌だ。血液から骨に入り込むケースもあれば、けがや手術などで露出した骨に直接侵入することもある。

 子どもの場合は腕や脚の骨の感染が多いが、高齢者で多発するのは、背骨の骨髄に感染して炎症を起こす化膿(かのう)性脊椎炎である。進行すると脊髄の周りにうみがたまり、神経を圧迫して、脚のしびれやまひを引き起こすこともある。

 高齢者に多い理由として、加齢による免疫力の低下が挙げられる。「よく見られるのは、腎臓に細菌が感染して起こる腎盂(じんう)腎炎や、心臓の弁に細菌が感染して発症する心内膜炎などが感染巣となり、細菌が骨髄に到達して発症する例です。結核を過去に患っていた人で、体内に残っていた結核菌が骨髄炎を起こす場合もあります。糖尿病患者での骨髄炎も多く、治療に難渋することも少なくありません」と大曲センター長。

 ▽抗生物質で細菌を死滅

 抗生物質を用いた治療法が中心となるが、病気が進行している場合は、化膿した骨の組織などを手術で取り除くこともある。

 大曲センター長によれば、これらの治療で骨髄炎自体はほとんど治癒するが、問題はいずれの治療法も高齢者の体に大きな負担となる点だ。「手術はもちろんですが、抗生物質の点滴治療は、細菌を確実に死滅させるために数週間の入院を要します。高齢者の場合、長期入院により身体機能が低下しますので、病気が治っても生活の質が低下してしまうのです」

 早めの治療が肝心だが、軽症例では目立った症状が表れず、見過ごされてしまうこともしばしばある。大曲センター長は「思い当たることのない腰や背中の痛みがある場合には、放置せずにかかりつけ医に相談しましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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