背中の痛み 家庭の医学

 背中が痛くなる原因として、まず、姿勢の異常が考えられます。背中が丸くなって鈍痛が起こる病気には、変形性脊椎(せきつい)症があります。背骨の老化による変形が原因です。脊椎の圧迫骨折は、高所から転落してしりもちをついたときによく起こります。背中の胸椎の突起をたたくと激痛が走ります。肋骨(ろっこつ)を骨折した場合にも、しばしば背中が痛みます。いずれも、高齢で骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の人に起こりやすくなります。

 脊柱が左右いずれかに曲がっているものを脊柱側彎(そくわん)症といいます。少女に多く、片方の肩が下がっているとか、片側の背や胸が出ていることで気づかれます。脊椎過敏症も若い女性に多くみられ、上部胸椎を1つか2つたたくと痛みが生じます。椎間板(ついかんばん)の一部が椎体の中にめり込んだものをシュモール結節といい、時に突発的に胸が締めつけられて狭心症とまちがわれることがあります。
 腎盂(じんう)腎炎も女性に多い病気で、尿の回数が多く排尿時の違和感を生じる膀胱炎の症状に加え、発熱と片側の背中の痛みがあらわれます。背中をたたくと痛むのが特徴です。

 背中から肋骨に沿った痛みを肋間神経痛といい、通常は片側に起こります。帯状疱疹(たいじょうほうしん)も片側の肋間神経に沿って、水疱(すいほう:水ぶくれ)を伴う発疹(ほっしん)と神経痛を起こします。水疱が治ったあとも、長期に強い痛みが残ることがあります。
 心臓・肺・肝臓・胆嚢(たんのう)・腎臓・胃腸疾患があると、関連痛といって、背中が知覚過敏(痛みに敏感な状態)になることがあります。急性・慢性膵炎(すいえん)では、腹痛より背中の痛みが主となる場合があります。

■背中の痛み
症状病名そのほかの症状など
正中の痛み変形性脊椎症高齢者
脊椎圧迫骨折しりもちの既往、たたくと痛む、高齢者
脊柱側彎症背中の変形、脊椎の彎曲
大動脈解離突発する激しい胸痛・背腰痛、ショック
片側性の痛み肋骨骨折高齢者、押さえると痛む、胸背痛、深呼吸や体動に伴う痛み、片側性
腎盂腎炎発熱、腰痛、背中をたたくと片側が痛む、尿の濁り
肋間神経痛肋骨に沿った痛み、片側性
帯状疱疹片側に水疱を伴う発疹、顔面の痛み、胸背部の痛み


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹