治療・予防

加齢による声の老化
声帯の筋肉を鍛えて予防

 加齢により手足の筋力が弱くなるように、声を出す時に使う声帯の筋肉も衰える。高齢者で声がかすれる、出にくいなどの異常がある場合、声の老化が進んでいる可能性がある。一人で悩まず専門医の治療を受けてほしい。

正常な声帯の吸気時(息を吸う時)・発声時萎縮した声帯の吸気時(息を吸う時)・発声時

 ▽異常訴える高齢者が増加

 声帯は喉仏の中にある粘膜のひだで、吐いた息(呼気)がその間(声門)を通ると振動し、声が出る。老化により声がかすれるのは、声帯が年齢とともに細くなり、声帯を動かす筋肉や粘膜も萎縮(声帯萎縮)するためだ。日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)耳鼻咽喉科で音声・嚥下(えんげ)外来を担当する中村一博診療准教授は「声帯を潤す粘液も減るため、声を出す時に声門がうまく閉じなくなります。すると、声帯が振動しにくくなり、息漏れが多くなり、弱々しい声やかすれた声になるのです」と説明する。

 声の異常を訴える高齢者は、近年増加傾向にあるという。声帯萎縮は女性では閉経後に徐々に進み、男性は70歳前後から多くなる。「声が通らない、聞き返されると訴える人もいます」と中村医師。

 ▽日頃から声を出す習慣を

 喉頭がんでも声のかすれが見られるが、中村医師は「加齢が原因の場合に比べて、『硬い声』になるのが特徴です。耳鼻咽喉科を受診して、加齢性の疑いがあり、仕事や日常生活などに支障を来しているなら、音声外来やボイスセンターなどがある耳鼻咽喉科で診断、治療を受けることを勧めます」と話す。

 治療は、声帯の筋肉を鍛えて萎縮の進行を抑えるリハビリが行われる。それで改善しない場合は、萎縮した声帯の位置を矯正して隙間をなくす手術をすることもある。

 中村医師によると、この手術は局所麻酔下で行うため、手術中に声を聞きながら声帯の閉まり具合を微調整できる利点がある。他にも、腹部から採取した脂肪組織などを声帯に注入する治療法もあるが、全身麻酔が必要で、声を聞きながら微調整することはできないという。

 声の衰えを防ぐために日ごろからできることもある。中村医師は「積極的におしゃべりしたり、歌ったり、日々声を出す習慣を続けるとよいでしょう。新聞などの音読もお勧めです。水分補給や加湿にも努めてほしい」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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