米・Brigham and Women's HospitalのMaria A. Pabon氏らは、心血管・腎・代謝(CKM)症候群に対する非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノンの使用が心房細動(AF)または心房粗動(AFL)の新規発症に及ぼす影響を評価する目的で、大規模臨床試験の統合解析FINE-HEARTを実施。その結果、フィネレノンはAF/AFLの新規発症リスクを有意に低下させることが示されたとJ Am Coll Cardiol2025; 85: 1649-1660)に発表した(関連記事「フィネレノンがeGFRスロープを改善」「HFpEFにフィネレノンが有効」)。

CKM症候群における不整脈リスクとMRAの関係に注目

 CKM症候群は、心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)、2型糖尿病などが互いに関連しながら多臓器障害が進行する病態。全身性の炎症や線維化を介して、AF/AFLなどの不整脈を含む多様な合併症を引き起こす。AF/AFLはCKM症候群の後期病態として現れることが多く、心血管死や心不全入院、腎機能悪化との関連も深いことが知られている。

 ミネラルコルチコイド受容体の活性化は、心筋の炎症や線維化、電気的リモデリングを通じてAF/AFLの発症に寄与することが示唆されている。近年、MRAによって2型糖尿病およびCKD患者のAF/AFL発症リスクが低下する可能性が示された(J Am Coll Cardiol 2021; 78: 142-152)。一方で、CKM症候群の構成疾患(心不全、CKD、糖尿病)のいずれか、または複数を有する患者群において、MRAがAF/AFLリスクに与える影響は明らかにされていない。

 そこでPabon氏らは、CKDと2型糖尿病を対象に行われたFIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKD、軽度〜中等度の左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)を対象としたFINEARTS-HFの3つの大規模第Ⅲ相臨床試験の統合解析を実施した。解析対象はAF/AFLの既往がない合計1万4,581例。AF/AFLの発症は盲検化された独立評価委員会により評価された。

フィネレノンでAF/AFLリスクが17%低下

 中央値2.9年の追跡期間中に、AF/AFLはフィネレノン群で286例(3.9%)、プラセボ群で345例(4.7%)に発症した。AF/AFLの発症リスクは、プラセボ群に比べフィネレノン群で有意に低かった(1.4件 vs. 1.6件/100人・年、ハザード比0.83、95%CI 0.71〜0.97、P=0.019)。この効果は、CKM症候群の構成疾患の数や試験にかかわらず一貫して認められた。なお、AF/AFLを発症した患者は、心血管死、心不全入院、腎機能悪化、全死亡のいずれのリスクも有意に高かった。

 以上から、Pabon氏らは「フィネレノンはCKM症候群を有する患者群において、AF/AFLの新規発症リスクを有意に低下させた。今回の解析は、心不全、CKD、2型糖尿病といったCKM症候群の各病態を対象にしており、同薬の予防的効果が多様な病態に及ぶことが示唆された。今後、CKMを背景に多疾患が併存する患者へのAF/AFL予防戦略の一環として活用されることが望まれる」と結論している。

(編集部)