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リフィーディング症候群は、長期に低栄養状態に陥っている人に、急激に栄養補給したときに表れる重篤な病態だ。飽食の現代であっても、摂食障害やがん、独居などのさまざまな身体的、社会的な背景から低栄養状態が長く続くとリフィーディング症候群を起こすことがある。上尾中央総合病院(埼玉県上尾市)栄養サポートセンターの大村健二センター長は「長期間続いた高度の低栄養状態からの回復は、決して急いではいけません。慎重に行う必要があります」と話す。
長期間、低栄養にさらされた人に栄養を与え過ぎると、死につながる恐れも
▽リン欠乏による障害
低栄養とは、その人が必要とする栄養が長期に摂取できていないことを指す。大村センター長は「拒食症や高齢での独り暮らし、アルコール依存症、嚥下(えんげ)障害や摂食障害など、リフィーディング症候群のリスクが高い人は多く、半年で10%以上の意図しない体重減少がある場合は要注意です」と指摘する。
人間の体液は、細胞膜を隔てて血液や細胞間液を含む外液と、細胞内の内液に分けられる。外液と内液では、カリウムやマグネシウム、リン、ナトリウムなどの電解質の濃度がそれぞれ異なる。この細胞内外の濃度差は、エネルギー産生などの代謝に関わっている。
低栄養状態が続くと、体はエネルギーを節約しようと、細胞内のタンパク質の合成や分解を遅くし、代謝を次第に抑えていく。ところが、この時に急激に栄養が補給されると、外液の電解質が一気に細胞内に移動し、血液中の電解質が不足してしまう。中でもリンが不足する低リン血症は、特に注意を要するという。
「血液中のヘモグロビンというたんぱく質は、2,3―DPGというリンの化合物と結合することで、全身に酸素を円滑に運んでいます。低リン血症で2,3―DPGが不足すると、酸素の運搬能力が落ちて組織が酸素不足に陥り、心不全や呼吸不全、肝機能障害、不整脈や意識障害、けいれんなど、さまざまな症状が引き起こされます」と大村センター長。最悪の場合は死に至ることもあるという。
▽栄養は少量から慎重に
リフィーディング症候群が懸念される患者への1日の栄養補給は、体重1キロ当たり5キロカロリーからスタートする。例えば体重50キロの人であれば、1日250キロカロリーからだ。糖代謝に利用されるビタミンB1を最初に補給し、血液中の電解質と体重の測定を行いながら、1週間以上かけて慎重に摂取カロリーを増やしていく。
大村センター長は「栄養摂取は病気の治癒には必要不可欠ですが、長期間低栄養にさらされていた人にとって、栄養の与え過ぎは死につながる恐れがあることを知っておいてください」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)
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