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横になった姿勢から起き上がると、強い頭痛に襲われる―。そんな症状が表れたら脳脊髄液減少症の可能性がある。頭痛やめまいなどのありふれた症状が多いため、周囲から理解されにくい。「仮病なのではないか」と疑われて孤立し、離婚、退職、不登校、自殺に追い込まれる人もいる。医師の間でも認知度が低いため、適切な治療がなされずに時間が経過し、重い合併症を引き起こすこともある。
▽吸収が過剰になり髄液が減少
脳脊髄液は、脳や脊髄(背骨の中にある太い神経の束)とそれらを包む膜(硬膜)との間にある空間(髄液腔)を満たしている無色透明な液体。髄液とも呼ばれ、脳や脊髄を保護する役割を果たす。何らかの原因で髄液が減るのが脳脊髄液減少症だ。
これまで原因としては、交通事故、スポーツなどの外傷によって硬膜が傷つき、そこから髄液が漏れるためと推測されてきた。しかし、順和会山王病院(東京都港区)脳神経外科の高橋浩一部長は「髄液は毎日脳内で一定量が作られ、脳の周りや脊髄の表面を通りながら、リンパや静脈などに吸収されるという一連の流れを繰り返しています。このシステムに異常が起こり、髄液の吸収が過剰になるという説が近年出てきており、これが正しいようです」と話す。髄液吸収の促進には、自律神経系の異常との関連が指摘されている。
▽ブラッドパッチが有効
髄液が減少すると、脳や脊髄の位置が沈んで神経などを圧迫し、さまざまな症状が表れる。特徴的なのは、寝ている姿勢から立位や座位に変わった後に起こる起立性頭痛。横になると痛みは消える。首の痛み、めまい、耳鳴り、視野がぼやけるなどの症状が表れることもある。進行すると、頭蓋骨と脳の隙間に血がたまる硬膜下血腫という合併症を起こし、片麻痺(歩行障害、手足の脱力)になる例や、命に関わるケースもあるという。
治療は、硬膜外自家血注入療法、別名「ブラッドパッチ」が有効だ。患者本人から採取した血液を硬膜の外側に注入すると、髄液が漏れているところで凝固し、漏れる穴をふさぐ。高橋部長らは、これまで2000人以上にブラッドパッチによる治療を行っており、全体で75%、小児の90%に有効だったという。
高橋部長は「誰もが訴える一般的な症状が多いため、患者自身も病気を見逃しがちです。起立性頭痛が表れたら、専門施設で早く診断、治療を受けてください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/01/04 08:00)
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