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加齢以外に特別な原因がないのに、両耳が聞こえにくい状態(難聴)を「加齢性難聴」と呼ぶ。誰にでも起こる可能性があるが、「年だから仕方がない」とほっておくと、人との会話がかみ合わなくなり、次第に会話が面倒になって、認知症やうつ病を発症しやすくなることが分かってきた。補聴器を使って聴力を回復させれば、それらを抑えられる可能性がある。
▽75歳以上の半数以上に
音を聞く能力が低下して、やがて言葉などの聞き取りに支障を来すようになる加齢性難聴。慶応大学医学部耳鼻咽喉科(東京都新宿区)の小川郁教授は「加齢による聴力低下は30代から始まっています。
徐々に進行し、65歳以上では3人に1人、75歳以上では半数以上に認められます」と説明する。小さな音から聞こえづらくなるが、同じ大きさの音なら、高い音が聞こえにくくなるという。
年を取るとなぜ聴力が低下するのか。「耳の奥に、音を感じる『有毛細胞』がありますが、加齢により減少して、内耳の機能が低下して聞こえが悪くなるのです。糖尿病、動脈硬化などにより、この細胞に血液を送る血管が傷み、血流が悪くなることも影響します」と小川教授。
また、大音量で音楽を聴く人、工場やパチンコ店など大きな騒音の出る場所に長くいる人も加齢性難聴になりやすい。そのためか、女性より男性に多い病気だという。
▽難聴で脳萎縮が早く進行
最近注目されているのが、認知症やうつ病との関係だ。小川教授は「加齢性難聴を放置していると、補聴器を着けて聴力を維持している人に比べ、脳の萎縮が進みやすいとの報告があります。また、私たちの研究グループで、65歳以上の難聴の人は難聴でない人に比べ、うつ病になるリスクが男性で3倍、女性で2倍になることを明らかにしています」と説明する。さらに、「高血圧や肥満、難聴などの認知症の予防可能な九つの危険因子の中で、難聴は最も大きなリスク因子であることが分かっています」と小川教授。
日本の認知症対策を示した厚生労働省の「新オレンジプラン」では、認知症の危険因子として難聴が加えられ、補聴器を使用して認知症を予防しようという考え方が打ち出された。小川教授は「70代で難聴があったら、早めに補聴器を使うことを勧めます。まず、補聴器相談医(日本耳鼻咽喉科学会のウェブサイトに掲載)のいる耳鼻科を受診しましょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/02/23 08:00)
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