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がんの治療は日々進歩しているが、副作用に悩まされるケースは今も多い。吐き気や嘔吐(おうと)、脱毛などさまざまだが、口内炎もその一つだ。抗がん剤治療や頭頸部(口や鼻、顎、喉、耳)のがんの放射線治療で発生するが、悪化するとがん治療の大きな妨げとなり、十分な治療効果が得られなくなる。
▽食事や会話が困難に
抗がん剤による口内炎は正式には「口腔(こうくう)粘膜炎」と呼ばれる。唇の裏側や頬の粘膜などに表れやすい。一般的な口内炎より重症で痛みも強く、時に感染や口腔乾燥を伴う。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)歯科の上野尚雄医長は「抗がん剤治療を行った患者の3~4割に見られます。抗がん剤の種類によってはさらに高率に表れ、がん細胞を狙い撃ちにする分子標的薬というタイプの抗がん剤では、軽度ではあるものの7~8割の患者で認められます。頭頸部がんに対する放射線治療では、ほぼ全員に生じます」と説明する。
重症の口内炎になると、痛みが強く、食事や会話が困難になる。口の中の傷口から感染した細菌が全身に広がって重症感染症を生じたり、食べられなくなると栄養不足で全身状態が悪化したりする例もある。「重度の口内炎を生じると、抗がん剤の量を減らすなど、治療計画を変更せざるを得なくなることすらあります」
▽粘膜保護剤が痛みに有効
口内炎治療の基本について、上野医長は「口内炎の傷に感染が起きると、痛みは強くなり、治癒も遅れます。とにかく口腔内を清潔かつ乾燥しないようにして感染を防ぐことが大事です」と話す。強い疼(とう)痛を伴うため、痛み止めの内服に加え、局所麻酔薬を塗布したり、うがい液に混ぜたりして使用することもあるという。
痛みを軽減するには粘膜保護剤も有効だ。「口内炎に塗ると、傷の表面を覆う保護膜が作られ、食事や会話の時の痛みを和らげてくれます」。ただし、口内が汚れたままだと感染の恐れがあるため使えないという。
虫歯や歯肉炎、入れ歯が合わないなど、口腔内の状態が悪いと口内炎になりやすい。このため、上野医長は「がん治療を開始する前に一度歯科の診察を受けましょう」とアドバイスする。歯科で口腔内の清掃を行い、粘膜への刺激になる悪い歯の応急処置や、入れ歯の調整をしておくだけで口内炎を防げることもあるという。がん患者の口腔ケアや歯科治療に詳しい歯科医師は、同センターの情報サイト「がん情報サービス」内の「がん診療連携登録歯科医名簿」で検索できる。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/03/28 09:00)
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