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全国的に流行期に入ったインフルエンザ。昨シーズンは、1回の内服で治療が済む抗インフルエンザウイルス薬(抗インフル薬)のバロキサビル マルボキシル(バロキサビル、商品名ゾフルーザ)が多くの患者に使用された。一方、この薬が効きにくい可能性を持った耐性ウイルスが現れたことなどから、慎重に使用すべきだとする意見もある。インフルエンザに詳しい医師で、川崎市健康安全研究所(川崎市)の所長を務める岡部信彦氏に聞いた。
▽貴重な選択肢に
インフルエンザは基本的に自然に治癒するが、発熱などの症状が表れてから48時間以内に抗インフル薬を使えば、自然経過に比べて約1日早く解熱する。抗インフル薬には、飲み薬、吸入薬、注射薬があり、飲み薬と吸入薬のそれぞれに5日間連続で使うタイプと最初の1回だけのタイプがある。
バロキサビルの効果は従来薬のオセルタミビル(商品名タミフル)と同じだが、1回の服用で治療が完結するのが特徴。岡部所長は「従来の薬と効く仕組みが異なるので、他の薬が効かないときなどに貴重な選択肢になる」と評価する。
▽耐性ウイルスの出現に懸念
一方で、バロキサビルは12歳未満に対する臨床試験の患者数が107人と12歳以上の患者よりも少ないことや、この試験で77人中18人(23.4%)に耐性ウイルスが確認されたことが懸念材料となっている。発売後、バロキサビルを飲んだ患者の家族が耐性ウイルスに感染した可能性のある事例も報告されている。
そのため、特に12歳未満の小児には「慎重に投与を検討する」(日本感染症学会)、「積極的な投与を推奨しない」(日本小児科学会)といった見解がある。両学会の意見について、岡部所長は「バロキサビルを使うのをやめる必要も、他の薬より優先して使う根拠もありません。科学的データが不十分で、専門医の間でも結論が出ていないのです」と解説する。
問題は1種類の薬を使い過ぎると、耐性ウイルスが現れる心配があることだ。「貴重な選択肢だからこそ、使い過ぎを避けて、大切に使うという意識が求められます」
バロキサビルの薬剤費は3割負担で約1460円(成人で体重80キロ未満の場合)で、タミフル(5日分)の約1.8倍、タミフル後発品(同)の約3.8倍になる。岡部所長は「抗インフル薬が必要かどうか、どの薬にするか、医師とよく相談しましょう」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/03/26 11:00)
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