インフルエンザ 家庭の医学

[原因]
 インフルエンザウイルスを含む飛沫(ひまつ)の吸入や、手を介して体内に入れることで感染します。

[症状]
 潜伏期は1~2日です。のどの痛み、せき、鼻水の症状から半日から1日遅れて、頭痛、発熱、全身のだるさ、さむけ、関節痛、筋肉痛などが出てきます。症状は3~5日続きます。半数の患者で、発熱はいったん下降しふたたび上昇する型をとります。その後もせきや鼻水は続きますが、快方に向かいます。
 インフルエンザにはいろいろな合併症が起こります。発熱時の熱性けいれんは1歳児に多い合併症です。中耳炎はもっとも高頻度(25%)にみとめられる合併症です。気管支炎は20%、クループは10%にみとめられます。肺炎は細菌の2次感染によるものとインフルエンザウイルスそのものによるものがあります。筋炎ではインフルエンザの回復期に筋肉痛や歩行障害が生じます。多くは数日で回復しますが、まれにミオグロビン尿を呈して腎不全になることもあります。
 もっとも重篤な合併症は脳症です。発熱から1日以内に嘔吐(おうと)、意識障害、けいれん重積(けいれんが30分以上続く状態)で発症することが多いです。死亡率は10%以下になりましたが、後遺症が25%にみとめられます。

[治療]
 安静と水分補給が大切です。発熱や頭痛に対して解熱鎮痛薬を用いることがありますが、種類によってはかえって状態を悪化させる可能性があるので注意が必要です(アスピリンはライ症候群という重篤な脳症を起こしやすくし、メフェナム酸やジクロフェナクナトリウムはインフルエンザ脳症の死亡率を上昇させる危険性がある)。発症後48時間以内なら抗ウイルス薬が効果があるので、用いる場合があります。細菌感染が合併したときには抗菌薬を用います。
 なお、インフルエンザは学校感染症に指定されており、発症後5日を経過し、さらに解熱後2日(幼児は3日)を経過するまでは登校(園)停止です。

[予防]
 ワクチンはインフルエンザの発症を完全には予防できませんが、有効性はみとめられています。

【参照】感染症:インフルエンザ

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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