治療・予防

スポーツ楽しむ中高年に目立つ―テニスレッグ
正しい治療で再発を回避 増本整形外科クリニック 増本項院長

 テニスレッグはふくらはぎの肉離れの通称で、スポーツをしている中高年世代の発症が目立つ。痛みが取れたからといってすぐにスポーツを再開すると再発を繰り返すので、注意が必要だ。自身もスポーツ時のテニスレッグを経験している増本整形外科クリニック(東京都杉並区)の増本項院長は「発症時の処置で経過が大きく変わります。正しい治療をしないと、筋肉の柔軟性が失われ再発しやすくなります」と話す。

RICEが後の経過を左右

 ▽筋肉の断裂で痛みが

 ふくらはぎは、腓腹(ひふく)筋内側頭と腓腹筋外側頭、その下層にあるヒラメ筋から成り、アキレスけんとつながってかかとの骨に付いている。走ったり跳躍をしたり、瞬時に方向を変えたりするなど、スポーツ時の動きに欠かせない動作を担う。

 筋肉は、自分の意志で動かす主働筋と、逆の動きをする拮抗(きっこう)筋が骨を挟んで一対になっている。例えばジャンプ動作では、腓腹筋とヒラメ筋が主働筋となって収縮し、すね側にある前脛骨(ぜんけいこつ)筋が拮抗筋として弛緩(しかん)する。その筋肉の一部が断裂した状態が肉離れだ。増本院長は「スポーツ時は瞬時の動作が多く、主働筋と拮抗筋が同時に収縮するような動きをすると、両方の筋肉のバランスが崩れ、筋肉が断裂してしまいます」と説明する。テニスやバスケットボール、野球などのスポーツで発症することが多い。

 発症時の主な症状は、断裂部位の痛みや違和感、皮下出血で、翌日になって痛みが出ることもある。筋肉内に血腫(出血により血液が体内にたまった状態)が残ると治りが遅くなるため、出血を最小限にとどめるのが治療のポイントだという。自分でできる応急措置として、増本院長は「RICE(ライス)」を勧める。「まず安静(Rest)にし、患部を冷やし(Icing)て、弾性包帯などで圧迫(Compression)し、心臓よりも高い位置(Elevation)にして、筋肉内部への血液の流入を減らします」。これだけで後々の経過が全く違うという。

 ▽運動再開に最低3週間

 注意が必要なのは、スポーツに復帰する時期だ。痛みが治まっても筋肉の柔軟性が低下しているため、すぐに再開すると再発しやすくなる。「柔軟な筋肉に戻すにはストレッチが必要で、RICE療法を3日間行った後、理学療法士によるストレッチを中心とした治療を徐々に開始します。スポーツ再開までには少なくとも3週間は必要です」と増本院長。スポーツ復帰の指標にしているのは、「カーフレイズ」という方法だ。壁に両手を着けて両足で爪先立ちをしてもらい、脚に違和感や突っ張り感がないかを診る。

 テニスレッグの予防には、ストレッチや筋力トレーニングが有効であるとも言われているが、増本院長によると完全な予防は難しいという。「テニスレッグを発症したらアクシデントと捉え、スポーツ外傷に詳しい整形外科できちんと治療してください」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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