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RSウイルスは風邪のウイルスの一種で、2歳になるまでにほぼ全員が感染するというごくありふれたウイルスだ。ただ、初感染の場合は重症化しやすく、早産児や心臓の病気などの重症化リスクを持った子どもは命に関わることもある。日本医科大学付属病院(東京都文京区)小児科の伊藤保彦部長は「RSウイルス感染による重症化を防ぐ唯一の方法は、シナジスという薬の注射です」と話す。
▽笛様の音や呼吸困難
RSウイルスは、健康な子どもや成人が感染しても軽い風邪のような症状で済んでしまう。ところが、早産児や重症化リスクのある子どもが感染すると、せきなどの呼吸器症状が強く出て細気管支炎を起こし、重症化しやすくなる。伊藤部長は「細気管支は、気管支から枝分かれし、酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞までの部分を指します。細くて内腔(ないくう)が狭いため、強い炎症が起こるとヒューヒューという笛を鳴らすような呼吸音が聞こえ、呼吸困難に陥ることもあります」と説明する。
RSウイルスにワクチンや特効薬はない。唯一重症化を防ぐのがシナジスという予防薬だ。人の体にウイルスが感染すると体内で抗体が作られる。その抗体成分を人工的に作り出したのがシナジスで、2002年に保険適用となった。
▽4週ごとに8回の注射
シナジスの接種対象は、早産児とRSウイルスに感染すると重症化しやすいリスクを持つ先天性の心臓の病気、免疫不全やダウン症などがある新生児や乳幼児だ。「9~10月に接種を始めて、流行する冬場をカバーする形で翌年の4~5月まで、4週間ごとに計8回、ももや臀部(でんぶ)に接種します」と伊藤部長。シナジスを接種すると体内に入ってきたRSウイルスの増殖が抑えられ、重症化を防ぐことができるという。
同院では年間で約100人にシナジス注射を接種している。リスクのある新生児や乳幼児は意外に多く、特に早産児の割合が高いという。早産がリスクになる理由について、伊藤部長は「通常の新生児に比べて早産児は臓器の発達が未熟です。中でも肺の未熟さの度合いが強く、細気管支炎を起こしやすいのです」と解説。接種対象は、在胎期間が28週以下の早産児で生後12カ月以下、29~35週の早産児で生後6カ月以下など、リスクによって異なる。多くの場合、産院で接種スケジュールが立てられ、医療機関を紹介される流れになる。
伊藤部長は「リスクを持つ子の親は病気の怖さを知り、しっかり予防してあげてください」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/02/22 05:00)
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