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原因不明の舌の痛みが治らず慢性化した場合、「舌痛症」の可能性がある。特に中高年の女性に多く、口の中の異常が心因的な問題に由来している病気だ。歯科心身症の専門医以外にはあまり知られていないため、家族ばかりか、医師にまで「気のせい」と片付けられてしまうことがある。自然には治りにくいため、歯科心身症の専門医で診てもらうことを勧めたい。
舌痛症の特徴
▽口渇や味覚異常を合併
心理的、社会的なストレスの影響で、体に不調が表れたり、病気が悪化したりする体の病気を心身症という。歯科心身症は、舌、口の中の粘膜など口腔(こうくう)に関連する器官の感覚に異常が生じる病気で、代表的なのが舌痛症だ。
日本歯科心身医学会の副理事長で、東京医科歯科大学歯学部付属病院の歯科心身医療外来で診療に当たっている豊福明科長はこう説明する。「舌や口内の痛みの原因になる病気がないのにもかかわらず、舌や口内の粘膜がヒリヒリ、ピリピリと痛みます。鎮痛薬や口内炎用の軟こうは効きません。しばしば口腔内の渇きや味覚異常を合併します」
痛みの特徴については、「我慢できないほどではないが、常に口の中が気になります。午前中は問題なくても午後に痛みを感じるといった日内変動が見られます。食事に支障はなく、むしろ食事中は和らぐようです」と説明する。40~70代の女性が患者の8割以上を占め、真面目できちょうめん、他者への配慮が強い人が多いという。
▽抗うつ薬で約7割が改善
舌痛症の原因は何か。豊福科長は「まだ明確ではありませんが、脳内の神経伝達系の異常と推測されています。そこに作用する抗うつ薬が舌痛症に効くことが裏付けの一つになっています」と話す。治療には実際、抗うつ薬を使用することが多く、約7割の患者で痛みなど症状の改善が示されている。「早ければ服用から4~5日で軽減し始め、1カ月ほどで痛みの程度がほぼ半減することが多いようです」
治療期間は多くの患者で長くても1~2年だという。治療終了の目安について、豊福科長は「痛みが完全に消えたかどうかより、できなかったことがどの程度できるようになったかで個々に判断するのがよいでしょう。できることを少しずつ取り戻していくようにすることが大切です」と助言する。現在、日本歯科心身医学会のウェブサイトに同学会認定医のリストを公開する準備を進めているという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/04/20 05:00)
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