発見が遅れがちな口腔がん
年齢や性別に関係なく発症
口腔(こうくう)がんは唇から口の中全体にできるがんの総称で、その場所によって舌がんや口唇がん、歯肉がんというように呼び名が変わる。日本では希少がんに分類されているため認知度が低く、口の中にがんができることすら知らないという人も少なくない。東京歯科大学水道橋病院(東京都千代田区)口腔外科の柴原孝彦教授は「口腔がんは、見て触って確かめられるがんですが、認知度の低さから発見が遅れることが多々あります。定期的な口腔がん検診で、前がん状態を見逃さないようにしてください」と呼び掛ける。
期的な口腔がん検診で予防しよう
▽低い認知度
日本では、口腔・咽頭がんになる人が毎年右肩上がりに増え、2018年の口腔・咽頭がん罹患数2万3000人(予測)のうち、50%以上が口腔がんだという。柴原教授は「皮膚がんと同様に、肉眼で見て触れることができ、早期に発見しやすいにもかかわらず、口腔・咽頭がんの死亡率は皮膚がんの4倍以上にもなります」と指摘する。世界的に見ても、先進国の中で日本の口腔・咽頭がんの罹患率と死亡率は高く、いかに認知度が低いかがうかがえるという。
口腔がんの初期は、自覚症状がほとんど無い。平均で約10年という長い期間を経てがん化する。柴原教授も「初期は舌や歯茎などの粘膜に白い斑点ができたり、粘膜がわずかに鮮紅色になったりする程度で、本人も全く気付かないことがほとんどです」と説明する。多くの人が進行して痛みが出てから受診するため、「小さな変化を見逃さないために、健康診断と同様に、年に1度は口腔がん検診も受けてください」と強調する。
▽検診情報はHPを活用
口腔がん検診では、視診や触診をはじめ、特殊な光を照射して病変組織を探し、疑わしい部分の組織を採取して検査を行う。費用は5千~1万円程度と施設により異なるが、行政の補助により、少ない費用で受けられる地域もある。ただ、実施している施設は多くないため、地域の歯科医師会や口腔がん撲滅委員会のホームページで確認するとよい。
「口腔がんといえば、以前は50~60代の男性で、喫煙者や不摂生な生活を送る人に多いとされてきましたが、近年は女性や若年層の発症が目立ちます」と懸念する柴原教授。将来的にがんになるかもしれないという視点で、口腔内にも目を向けたい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/22 11:00)