治療・予防

つわりに似た症状―妊婦の逆流性食道炎
生活習慣の見直しで予防を(山王病院産婦人科 藤井知行病院長)

 胃酸が食道へ逆流して食道内に炎症を起こす逆流性食道炎は、肥満の人や高齢者などのほか妊婦も発症しやすいが、症状がつわりと似ており、見分けがつきにくい。山王病院(東京都港区)産婦人科の藤井知行病院長は「一般につわりが治まってくる妊娠14週以降も胃の不調が続く場合は、逆流性食道炎や胃の病気が疑われます」と話す。

日常生活を見直しても改善しない場合は、産科医に相談を

 つわりとの違いは?

 妊娠中に逆流性食道炎が起こりやすいのは、子宮が胃を圧迫するからだ。そのため、つわりが妊娠初期に見られるのに対し、逆流性食道炎の症状はおなかが大きくなってくる妊娠中期以降に表れやすい。個人差があるが、一般につわりの症状は空腹時に、逆流性食道炎の症状は食後に表れやすいという。

 主なものは胸焼け、げっぷ、酸っぱいものが上がってくる呑酸(どんさん)などだが、喉の違和感や声枯れが起こることもある。「睡眠中に胃酸が逆流すると、胸焼けなどの症状に気付かない場合もあります。逆流性食道炎で声枯れが起こることも知っておくとよいでしょう」と藤井病院長。

 ▽生活習慣を見直そう

 逆流性食道炎は、もともと肥満気味の妊婦に起こりやすい。また〔1〕満腹まで食べる〔2〕脂肪分・糖分の多い食事を取る〔3〕食べてすぐに寝る(横になる)〔4〕姿勢が悪い―などの生活習慣があると起こりやすくなる。これらの点に気を付けて生活すれば、逆流性食道炎は予防できるという。

 特に気を付けたいのが食生活だ。「食べると気持ちが悪くなる時期は、1回の食事量を減らして、その分、食事の回数を増やしましょう。また、胸焼けや呑酸が起きた時は、水を飲んで上がってきた胃酸を洗い流すと楽になります」と藤井病院長はアドバイスする。前かがみの姿勢にならないこともポイントだ。

 こうした工夫をしても症状が改善しない場合は、逆流性食道炎以外の病気が隠れている可能性があり、かかりつけの産科医に相談する。逆流性食道炎であれば、胃酸の分泌を抑える薬が有効だ。妊娠中も安全に服用できる薬を選んで処方してもらうとよい。市販の胃腸薬も使えるが、藤井病院長は「1週間服用しても症状が改善しなければ、必ずかかりつけ医に相談してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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