飲み込みづらさやつかえ―アカラシア
食道がんのリスクも
アカラシアとは、食べたものが食道から胃にスムーズに流れなくなり、ものが飲み込みにくい、つかえた感じがするなどの症状を訴える病気だ。東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)上部消化管外科の矢野文章診療医長は「早期に正確な診断を受け、自分に合った治療法を選択することが大切です」と話す。
腹腔鏡下手術で広がっていた食道が元の太さに(東京慈恵会医科大学付属病院提供)
▽診断まで7年以上
飲み込んだ食べ物は食道を通過して、胃との境にある下部食道括約筋が緩むと胃に流れていく。ところがアカラシアを発症すると、下部食道括約筋が収縮して緩まなくなり、食べ物が胃に流れずに食道にたまってしまう。
そのため、食後すぐに寝ると、嘔吐(おうと)や誤嚥(ごえん)を来すことがある。また、患者の50%前後に胸痛が出現し、心筋梗塞と間違えて循環器科を受診する人もいる。症状から逆流性食道炎とも間違えやすい。食べては吐くを繰り返すため、摂食障害と間違えられて精神科に紹介されるケースもあるという。
同院におけるアカラシア患者の平均年齢は46歳。男女差はない。10万人に1人のごくまれな病気であり、はっきりした原因は分かっていない。診断には、食道運動機能検査(食道内圧検査)という特殊な検査が不可欠だが、受けられる医療機関は限られる。「当院でアカラシアと診断した患者739人では、症状を感じてから診断までに平均7年以上かかっています」と矢野診療医長。
▽内視鏡か腹腔鏡が主流
治療の基本は、収縮した下部食道括約筋を広げて通過障害を解除することだ。治療法には、内視鏡を用いて下部食道括約筋の一部を裂くバルーン拡張術と、切開する内視鏡的筋層切開術(POEM)、腹腔(ふくくう)鏡下手術がある。薬物療法が行われることもあるが、効果が不十分な場合が多い。
バルーン拡張術は、軽症には有効だが再発の可能性がある。POEMは体に傷が残らず、胸痛の軽減に有効だが、術後に逆流性食道炎が起こり得る。腹腔鏡下手術では逆流性食道炎のリスクは減るが、腹部に小さな傷が残る。バルーン拡張術は日帰りで済むが、POEMと腹腔鏡下手術の入院期間はいずれも1週間。
どの治療を選ぶかは、病気の進行度や患者の年齢などによって異なる。同院では、メリットとデメリットを説明し、患者に選択してもらうという。矢野診療医長は「アカラシアの患者は食道がんのリスクが8~20倍高いという報告があります。治療後も年に1度の内視鏡検査を欠かさないでください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/06/01 07:00)