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アジア圏の中でも日本人に多い近視性黄斑変性症は以前は治療法がなかったが、新たな治療薬が登場し、視力保持が期待できるようになった。日本医科大学千葉北総病院(千葉県印西市)眼科の五十嵐勉部長は「いかに初期段階で治療を開始できるかが病気の経過を左右します」と強調する。
早期の治療が視力維持の鍵
▽出血で急な視力低下
眼球の奥行き、眼軸長の日本人の平均は約24ミリだが、26ミリ以上に伸びると強度近視となる。近視性黄斑変性症は強度近視で眼軸長が伸び、視機能に重要な黄斑部や視神経、網膜などに亀裂が生じ、眼底に病変を来す状態だ。
五十嵐部長は「遺伝的要因が強く、学童期から近視が進行するケースでは、将来、強度近視になるリスクが高いことが分かっています」と説明する。
網膜の後ろに血管の密度が高い脈絡膜があり、その間はブルッフ膜という組織で遮られ、血管の老廃物が網膜に影響しない仕組みになっている。しかし、眼軸長が伸びるとブルッフ膜にも亀裂が生じ、不要な血管(新生血管)が網膜内で増殖する。
そのため、中央の黄斑部の細胞が死んだり出血が起きたりして視力に影響が出る。「物が二重に見えたりゆがんで見えたりし、新生血管から出血すると急激な視力低下に陥ることもあります」
▽抗VEGF注射
診断は視力や眼圧の検査に加え、眼底検査で網膜や視神経を診る。網膜光干渉断層計(OCT)や造影剤で眼底を撮影し、血管の亀裂や出血の有無を確認する。
近年、抗VEGFという新生血管の増殖を抑える薬が治療に用いられている。「白目の部分(硝子体)に直接注射をします。近視性黄斑変性症では1回の投与で効果が持続するので、その後は再発時に注射をしていきます」と五十嵐部長。早期の治療開始が、視力維持の鍵だという。
一方、太陽光に含まれるバイオレットライトと呼ばれる波長の光が近視予防に有効であることが分かった。近視の進行を抑制するEGR1という遺伝子を活性化させるという。近視は成長に伴い進行するので、子どもの頃に1日2時間程度の外遊びをすることが推奨される。
五十嵐部長は「近視性黄斑変性症は、治療可能な病気になっています。抗VEGF薬の治療が可能かどうか、網膜の専門医がいる眼科を受診してみてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/02/19 05:00)
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