治療・予防

小まめな水分補給で予防
~夏場にも起こる脳梗塞(順天堂大学医学部付属浦安病院 卜部貴夫副院長)~

 冬に多いイメージの脳梗塞は夏にもよく起こり、そのリスクを高めるのが脱水だ。順天堂大学医学部付属浦安病院(千葉県浦安市)の卜部貴夫副院長に、夏の脳梗塞対策や水分補給のコツについて聞いた。

寝る前と起床時にもコップ1杯の水分を

 ▽脱水で血液ドロドロに

 脳梗塞は気候が穏やかな春や秋より、冬や夏に多い傾向がある。冬は急激な温度差で血管が収縮して血管が詰まるのに対し、夏は大量の汗で脱水状態になり、血液がドロドロになって、血管を詰まらせる血栓(血の塊)ができやすくなる。

 汗ばむ季節は水分補給が重要だが、喉が渇いても一気に飲まず、少しずつ飲んだ方が脱水予防になるという。利尿作用があるお茶やコーヒーより、常温の水がよい。スポーツなどで大量に汗をかいたときは、塩分も補給できるスポーツドリンクがお薦めだ。アルコール飲料は逆に脱水を起こしやすくなる。

 また、就寝中は汗をかく上、血液の循環が悪くなり、起床時に血栓が詰まりやすい。就寝前と起床時にコップ1杯の水を飲むことを習慣にしたい。夜間に喉が渇いて目が覚めたら飲めるよう、枕元に水を用意しておく。

 卜部副院長は「高齢になると、トイレが近くなるからと水分を控える人が多いのですが、食事以外に1日一般成人で2リットル(高齢者は1~1.5リットル)は飲んだ方がいいでしょう。脳梗塞はひとたび起こすと命に関わり、後遺症が残れば日常生活は一変します。意識して小まめに水分を補給してください」とアドバイスする。

 ▽一刻も早く搬送を

 脳梗塞を起こしたら、一刻も早く救急車で専門の医療機関に搬送してもらうことが重要だ。4.5時間以内であれば、薬で血栓を溶かす血栓溶解療法で脳へのダメージを最小限に抑えられる。6時間以内なら、カテーテルで血栓を取り除く治療法が選択肢となる。

 脳梗塞を見分けるには、FAST(Face・顔、Arm・腕、Speech・言葉、Time・発症時刻)がポイントになる。卜部副院長は「顔がゆがんでいないか、両腕を前に伸ばしたまま保てるか、いつも通りに言葉が話せるか―をチェックして、一つでも症状があれば脳梗塞の可能性が高いです。一時的な症状(一過性脳虚血発作)であっても放置は禁物です」と注意を喚起している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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