治療・予防

在宅勤務で増えるベランダ喫煙
~ウィズコロナ時代のタバコ(産業医科大学産業生態科学研究所 大和浩教授)~

 新型コロナウイルス感染拡大で在宅勤務やステイホームが広がり、集合住宅のベランダや自宅玄関先でタバコを吸う人が増え、受動喫煙をめぐる社会問題になっている。産業医科大学産業生態科学研究所(北九州市)の大和浩教授に話を聞いた。

ベランダ喫煙

 ◇喫煙者はコロナに脆弱

 喫煙は新型コロナの感染や重症化のリスクを高め、ワクチンの効果を弱め、後遺症のリスクを高めるとの報告もある。新型コロナに脆弱(ぜいじゃく)な喫煙者が、勤務先などの喫煙室でタバコを吸うことは危険だ。

 大和教授は「喫煙室は密閉、密接、密集で3密の上、タバコ由来の有害物質が高濃度で充満しています。会話やせきで発生したウイルスを含むマイクロ飛沫(ひまつ)が長時間浮遊しています」と説明する。実際、仕事での接点はないが、オフィスの喫煙室を共有していたために感染拡大した事例もあり、「コロナを機に閉鎖している喫煙室は廃止しましょう」と呼び掛ける。

 屋外の喫煙コーナーも密接、密集の「2密」で、感染の危険性がある。「自身の感染予防・重症化予防のために禁煙を勧めます」

 ◇近隣でPM2.5の濃度高く

 職場では勤務時間内は喫煙できない、あるいは喫煙室に限り吸える状況だが、在宅勤務をすると、「自宅では比較的自由に吸えるため、喫煙量が増えた人もいます」と大和教授。国立がん研究センター(東京都中央区)が20歳以上の男女2000人を対象に行った調査(2021年3月)によると、喫煙者の18%が「コロナ禍で喫煙本数や喫煙量が増えた」、非喫煙者の10.6%が「同居人の喫煙による受動喫煙が増えた」と答えている。

 「キッチン換気扇の下で喫煙する人がいますが、全ての煙が排気されるわけではない。ベランダで喫煙しても、煙はサッシの隙間からリビングに流れ込んできます」

 大和教授らは、集合住宅のベランダ喫煙が周囲に及ぼす影響を調べた。その結果、隣室のベランダと上階のベランダに煙が広がった後、窓からそれぞれの室内に入り、タバコの燃焼による微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が高くなることを確認した。

 「少なく見積もっても風下25メートル以内で受動喫煙は起こります。敏感な人なら40メートル先のタバコ臭も感じますよ」

 改正健康増進法(20年施行)で、吸う人は周囲に受動喫煙が生じないよう配慮することが求められている。大和教授は「受動喫煙をなくす唯一の方法は吸える場所をなくし、禁煙外来に通いタバコをやめることです」と提言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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