治療・予防

三次喫煙に注意
残留化学物質吸う危険(聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科 大西一成准教授)

 喫煙において、一次喫煙、二次喫煙(受動喫煙)ともに健康被害が明らかにされている。そして近年、喫煙による三つ目のリスクとして三次喫煙(残留受動喫煙、サードハンド・スモーク)が注目されている。「禁煙こそが喫煙による健康被害をなくす最善策です」と強調する聖路加国際大学(東京都中央区)大学院公衆衛生学研究科の大西一成准教授に話を聞いた。

全面禁煙の映画館内からたばこの有害物質が。健康を害する可能性も

全面禁煙の映画館内からたばこの有害物質が。健康を害する可能性も

 ▽衣類や髪にも付着

 喫煙者自身が煙を吸うのが一次喫煙、喫煙者が吐き出す煙やたばこの先から立ち上がる煙を第三者が吸い込むのが受動喫煙だ。三次喫煙とは、たばこの火が消えた後に残留する化学物質を吸い込むことである。

 ニコチンやタールなどたばこに含まれる数千種類にも上る化学物質のほとんどは有害であり、喫煙者の衣類や毛髪、カーテンやソファなどあらゆる場所に長時間、残留する。喫煙者の服や部屋がたばこ臭いのはこのためだ。これらの化学物質が何かの拍子に再び放散され、それを吸い込むことで健康リスクにつながることが懸念されている。

 ▽全面禁煙の映画館でも

 実は三次喫煙はまだ新しい概念で、健康リスクとの直接的な因果関係は立証されていない。だが、大西准教授は「受動喫煙によるがん、心血管疾患などの発症リスクは分かっています。今年発表されたドイツの研究では、全面禁煙の映画館内からたばこの有害物質が数多く検出され、三次喫煙が十分に起こり得ることが示されました」と話す。つまり、喫煙者の髪の毛や衣服、かばんに残留した有害物質が映画館の座席、壁などに付着し再放散されていることが立証されたのだ。そのうち15種類の有害物質について1時間当たりの受動喫煙濃度に換算したところ、発がん性のあるホルムアルデヒドがたばこ約1本分、ナフタレンでは約10本分に相当することが明らかになった。

 喫煙しない人が自身の健康を守るには、例えば、たばこ臭い所に近づかないという選択肢もあるが、加熱式などの新型たばこには匂いをあまり感じさせない加工が施されており、効果的とは言えない。「マスクは、防じん用なら化学物質の粒子の侵入を防ぐことはできますが、匂いは防毒用でなければ防げません」
 鍵を握る喫煙者については、衣類をたばこの有害物質が付着または再放散されにくいデニムやシルク素材に変える方法もあるが、非現実的だ。大西准教授は「禁煙こそが最善策です」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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