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禁煙するなら今がチャンス
~たばこは値上げ、コロナ禍で飲み会も少ない~ 医学博士 福田千晶

 喫煙者の中には、「いつかは禁煙したい」とか「禁煙したいけど、なかなかできない」という人は多いでしょう。そんな人は、コロナ禍であり、しかもたばこが値上げになった今がチャンスと思います。

1日1箱吸えば、40年で1000万円が「灰」になる計算

 ◇たばこ代は今後の人生でいくら?

 たばこが今月から値上げになり、メーカーや種類によって異なりますが、1箱およそ600円です。1日に1箱を吸うなら、1カ月で1万8000円です。年間でおよそ22万円、10年間で220万円です。現在40歳の人が80歳まで40年間は喫煙すると22×40=880。40年間のたばこ代は880万円と計算できます。しかし、その間にも値上げがあるでしょうから、おそらく1千万円に達するでしょう。

 喫煙が健康に及ぼす影響に関しては、いろいろなデータがありますが、非喫煙者に比べて寿命は約10年短くなります。歯が抜け落ちる年齢も10年くらい早くなります。その他に、がんの罹患(りかん)率、脳卒中や心筋梗塞の罹患率、認知症の罹患率などでも、喫煙が健康に悪影響を及ぼしていることが広く知られています。その上に、今後の人生で1000万円を灰にしていくとは…。今が禁煙チャレンジのチャンスと思えます。

 ◇コロナ禍における喫煙

 新型コロナウイルス感染の不安は、なかなか終わりになりません。特に、感染リスクの高い人や重症化リスクの高い人は、さらに心配なことでしょう。感染リスクや重症化リスクについては喫煙者の皆さんも恐れていることでしょう。実は、喫煙者には感染しやすく、重症化しやすい理由がいろいろあります。

 1)喫煙所は、まさに「三密」の世界です。室内喫煙所は閉鎖されていますから「密閉」。あまり広くないスペースに喫煙者が「密集」します。そのため、喫煙者同士は「密接」することになります。

 2)たばこを吸う前に、手を洗いに行く人が多いとは思えません。手にウイルスが付着していたら、たばこを口元に運ぶたびにウイルスが唇に付くことになります。これも感染リスクにつながります。他の喫煙者もたばこを吸う時は、手が唇に触れます。その手で喫煙室のドアノブなどを触るのですから、喫煙室はウイルス感染の高リスク地帯なのです。

喫煙所は「三密」になりやすい

 3)喫煙により、喉の粘膜は傷んで、ウイルスを除去する機能も弱くなり、免疫機能が低下します。さらに、喫煙者では新型コロナウイルスが体内に入り込む時に作用する受容体の数が増えるという報告もあるようです。そのため、ウイルスは排除されにくく、体内に入り込みやすくなり、感染しやすく、重症化もしやすいと考えられています。

 4)コロナワクチンを接種して期間を経ると抗体が減少します。高齢者と喫煙者では抗体が減少しやすいという報告もあります。抗体が減少すれば、感染リスクの上昇につながると考えられるのです。

 このように、さまざまな理由で喫煙は新型コロナウイルス感染のリスクになります。ですから、この機会に禁煙を考えてみませんか?

 ◇禁煙挫折のきっかけは飲み会

 意を決して禁煙したのに、挫折して喫煙を再開することもあります。多くの人が経験しているのは、「飲み会で隣の席の人にたばこをもらって吸い始めてしまった」というパターンです。

 アルコールの作用で血管が拡張するので、喫煙で血管を収縮させると心地よいのは、医学的には理にかなっています。例えると、サウナの後の水風呂が好まれることと似ています。

緊急事態宣言は解除されたが飲酒を伴う会食にはまだ制約も

 禁煙すると、たばこやライターなどの喫煙関連グッズを処分して持ち歩きません。ですから、吸いたくても吸えないのです。しかし、飲み会の席で隣に座った人が吸っていると、1本もらって吸うことができてしまいます。隣が喫煙者の悪友(?)なら、禁煙中と知っていても「1本、どう?」と勧めるかもしれません。そして誘惑に負けてしまうと、喫煙生活に逆戻りとなります。

 9月末に緊急事態宣言が解除され、さまざまな感染防止対策が求められていた地域でも飲酒を伴う会食が可能にはなりました。しかし、時間制限があったり人数制限があったりして、コロナ禍になる前のように大勢での飲み会は、まだまだ盛んではありません。ですから、「せっかく禁煙したのに飲み会で吸ってしまって喫煙再開」と挫折する可能性は少ないかもしれません。ますます「今が禁煙のチャンス」なのです。(了)


福田千晶氏

 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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