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視界全体にいつも小雪が降っているように見える「小雪症候群」は、眼科医にもあまり知られていない病気だ。小雪症候群の患者を多く診ている井上眼科病院(東京都千代田区)の若倉雅登名誉院長は「まずはこの病気の認知度を上げていきたい」と話す。
視界全体に小雪が舞うように見える小雪症候群のイメージ
◇脳の誤作動か
若倉名誉院長は、2005年ごろから「視野いっぱいに細かな白い点がちかちかしたり、物がまぶしく見えたりする」「砂嵐のようなノイズで視野が覆われている」といった症状を訴える患者が増えていることに気付いた。小雪症候群と名付け、患者のデータを取ってきた。その後、海外でもビジュアルスノー症候群として報告され、国際的な診断基準がつくられた。
発症年齢は20~40歳代が多いが、幼少期に発症する人もいる。小雪や砂嵐は片目でも両目でも、目を閉じていても見えることが共通点だ。だが、視力検査、眼底検査、視野検査などで異常は見つからない。
「視覚に関係する脳のどこかに誤作動が生じて感覚の異常や過敏が起こっていると推測されますが、詳細なメカニズムは不明です」
◇失明の心配まずない
日本にはまだ小雪症候群の診断基準がない。井上眼科病院では現在、約100人が小雪症候群で受診している。若倉名誉院長が、これまでに小雪症候群が疑われた患者21人の治療経過を調べた結果、12人は片頭痛を持っていた。また、陽電子放射断層撮影(PET)装置による検査で脳内の糖代謝を調べた6人中4人に、視覚に関わる部位で糖代謝の低下が見られたという。「こうした機能異常が症状の出現に関係している可能性もあります」
今のところ有効な治療法がないため、症状を和らげる対症療法が中心だ。片頭痛を繰り返すようなら薬物療法が行われ、まぶしさを感じる場合は遮光レンズなどが処方される。
「これまでの臨床経験から、小雪症候群で失明することはまずありません。一日でも早く診断基準ができ、治療法が確立することを期待しています」と若倉名誉院長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/12/17 05:00)
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