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小児期に発症すると、汗をかかない「無汗症」が多く、成長するにつれて手足の関節の痛み、心臓や腎臓の機能障害などを引き起こす「ファブリー病」。厚生労働省が国内の患者数が5万人未満の「希少疾患」に分類している。原因や発病メカニズムが未解明で、根治療法も発見されていない。専門医も少ないため、適切な診断・治療を得られずに苦しんでいる患者が多い。
年齢に応じて変化するファブリー病の症状=武田薬品工業ウェブサイト「ファブリーツリー」より転載
ファブリー病は細胞内の特定酵素の働きが低下し、さまざまな物質が細胞内に蓄積されることで起きる遺伝性疾患。酵素補充法などの治療で症状の管理はできるのだが、認知度の低さから、診断・治療にまで至らずに放置されている例も少なくない。
発症は小児期が多いが、成人してから発症する例も報告されている。自覚症状としては、発汗不良(無汗症)や手足の痛みなどから、腎臓や心臓の機能障害まで多岐にわたる。治療は不足している酵素を定期的に点滴で補充することで、細胞内の不要物質を排出させていくのが一般的だ。
総合南東北病院(福島県郡山市)遺伝病治療センターの衞藤義勝(よしかつ)センター長は、「酵素補充療法は発症早期から始めるほど効果が出るし、逆に成人になってからでは限界がある。できるだけ早期に発見して治療を始めることが、症状の管理や患者や家族の生活の質(QOL)の維持につながる」と話す。
ただ、一般の医療現場で実際に患者を診る機会は少ないため、小児科医でも理解に差がある。ファブリー病の患者が一般の小児科を受診しても、担当医が症状から病気を絞り込んでいく候補の中にファブリー病を入れないことがある。「医師はもちろん、患者や家族に対しても、病気の知名度を上げていく必要がある」と衞藤センター長は話す。
ある新生児調査では7000人に1人がファブリー病だったという報告もある。また、症状が表れてから、診断が確定するまで男性で平均13.7年、女性で16.3年かかったという調査もある。各地の患者や家族は「汗をかきにくい」「手足が痛い」などと自身の病状をSNSなどで訴えている。
衞藤センター長は「これらの数字は、幼児や小児の時に発症しても、家族はもちろん医師にも気付かれずに苦しみ続けている患者が少なくないことを意味する。疑いがあれば、専門医もいるし、検査できる医療機関も全国に展開している。まずはこの病気について知ってもらうことが重要」と訴えている。(了)
(2022/12/14 05:00)
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