治療・予防

発汗せず体温上昇、熱中症の危険も
特発性後天性全身性無汗症(東京医科歯科大学医学部付属病院皮膚科 横関博雄科長)

 気温や湿度が上昇して体温が上がると、発汗して体温を下げる機能が体内に備わっている。特発性後天性全身性無汗症(AIGA)は、汗をかく量が極端に減る疾患だ。体内に熱がこもり、熱中症になるなど命に関わる場合もある。東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区)皮膚科の横関博雄科長に聞いた。

特発性後天性全身性無汗症の治療の流れ

 ▽汗が突然出なくなる

 発汗は、神経間に情報を伝えるアセチルコリンという物質が発汗を促す神経を通じて分泌され、皮膚にある汗を出す器官(汗腺)に作用して起こる。AIGAは、手足や脇の下の発汗や、緊張などによる発汗の機能は保たれているものの、突然全身の広範囲(検査で25%以上)で発汗量が減少する。原因の一つとして、汗腺にアセチルコリンが作用する場所(アセチルコリン受容体)が正常より少ないためともいわれるが、はっきりと分かっていない。

 2007~12年に同病院で行われた研究では、国内患者数は145人で、10~30代の男性が多かったが、実際にははるかに多い患者がいると考えられている。

 ▽発汗機能を鍛える

 AIGAになると皮膚の乾燥やアトピー性皮膚炎を合併したり、皮膚にピリピリする痛みや小さな発疹が表れるじんましんが生じたりすることがある。高温多湿な環境でも発汗できず、発熱やめまい、動悸(どうき)、悪心(おしん)といった熱中症の症状を来すことが問題となる。

 発汗機能は使わないと衰えるため、スポーツをしていた人が数カ月休んだときや、冬に発症するケースが目立つという。「発汗しないことに気付かず、激しい運動をして熱中症になる人も多いのです」と横関科長。

 治療法は確立されていない。対処法として、不要な厚着はしない、外出時は冷水を入れたペットボトルを持ち歩くなど、体温を必要以上に上げないための工夫が必要だ。軽症であれば半身浴や短時間のサウナ、軽い運動などで発汗機能を鍛え軽快する人もいる。

 症状が改善せず、日常生活に支障を来す場合は、ステロイドを3日間連続して点滴で投与するステロイドパルス療法を1、2回行う。80%以上の人で改善するが、効果が不十分または再発する人がいる。「発症から数年ほどたつと、汗腺が萎縮してステロイドパルス療法の効果が低くなります。発汗量を測定できる医療機関を早めに受診し、1年以内に治療を開始することが理想的です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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