小児期に発症多い遺伝性疾患―ファブリー病
経口薬登場で選択肢が拡大 東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター 大橋十也センター長(小児科教授兼任)
先天的な遺伝子の異常により、細胞内で「αガラクトシダーゼA(GLA)」という酵素が不足して発症するファブリー病。GLAが分解すべき糖脂質が、神経、腎臓、心臓、目や血管の細胞などに蓄積して、手足の痛み、汗をかきにくい(低汗症)、心臓の肥大や腎不全といった症状が表れる。2018年には初の経口薬が承認され、治療の選択肢が増えた。東京慈恵会医科大学(東京都港区)総合医科学研究センターの大橋十也センター長(小児科教授兼任)に話を聞いた。
ファブリー病の症状
▽糖脂質の異常蓄積が原因
ファブリー病は、遺伝子異常によってGLAが作られない、または働きが低下して発症する。GLAによって分解されるはずの糖脂質が分解されず、細胞中に蓄積することで、さまざまな症状を引き起こす。まれな疾患で、治療を受けている患者は国内で約700人とされる。
小児期に発症することが多く、手足の指先の焼けるような痛み、低汗症、角膜の混濁、皮膚に多発する直径数ミリの血管腫(赤い発疹)などが表れる。進行性の病気で、成人期には心肥大や腎機能障害、脳卒中などを発症することもある。
治療法には、不足したGLAを点滴で補充し、糖脂質の分解を促す「酵素補充療法」がある。導入から15年以上たち、心臓や腎臓の障害を抑えるなど有効性・安全性のデータが蓄積されている。だが、2週ごとの点滴を一生涯続ける必要があり、注射の痛みや通院の負担が課題だった。治療を継続しても、臓器障害が進行する患者もいるという。
▽患者の負担が軽減
18年には、既存の酵素補充製剤とは異なる作用機序を有する経口薬の「ガラフォルド」(一般名ミガーラスタット塩酸塩)が登場した。
「活性が低下したGLAに結合して正しい構造にし、安定化させて酵素活性を上昇させる薬です」(大橋センター長)。GLAが本来の機能を果たして糖脂質を分解するため、臓器への蓄積を防ぐことができる。経口薬なので頻回の通院が不要で身体的負担も少ない。
この薬を使用できるのは16歳以上で、事前に遺伝子検査でこの薬に反応することを確かめる必要がある。承認されてからまだ2年で、長期の有効性・安全性のデータが不十分という課題も残されている。
ファブリー病は加齢とともに進行し、深刻な臓器障害に至る可能性もある。大橋センター長は「手足の痛み、発汗障害などがあれば受診し、診断されたら早期に治療を始めましょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/08/06 13:22)