治療・予防

汗をかけない難病―特発性後天性全身性無汗症
20~40代男性が危ない

 人間は、気温が高いと汗をかいて体温の上昇を防ぎ、脳を冷やしている。特発性後天性全身性無汗症(無汗症)は、明らかな原因がないのに突然汗が出なくなり、熱の放散が妨げられるために体温が上昇してしまう難病だ。埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)神経内科・脳卒中内科の中里良彦准教授は「無汗症は、汗をよくかく人に表れやすいと言われています。暑さに弱くなったと思っている人の中には、実は無汗症が潜んでいるかもしれません」と話す。

 ▽体温の上昇と皮膚の痛み

 人の発汗には、体温を一定に保つための温熱性発汗と、緊張や不安から生じる精神性発汗がある。温熱性発汗を行う汗腺はほぼ全身に分布しており、例えば体重が70キロの人は、100ミリリットルの汗をかくことで体温が1度上昇するのを防ぐといわれている。無汗症の患者はこの温熱性発汗の機能が低下し、汗が出なくなる。

汗には体温を調節する重要な役割がある

 中里准教授は「無汗症になると、汗をかく環境下で体温が急激に上昇し、疲労感や頭痛、悪心(おしん)など、熱中症のような症状が起こります。水分を取っているのに汗が出ない、チクチクとした皮膚の痛みやじんましんを伴うのが特徴です」と説明する。

 スポーツ選手や屋外で作業をする職業の人など、普段からよく汗をかく20~40代の男性に生じやすく、汗をかく環境にいなければ全く問題にならないため、診断されるまでに長い年月を要することも少なくないという。無汗症の部位は四肢や体幹(胴体)から表れ、手のひらや足裏などは最後まで残る傾向にある。この点について中里准教授は「手のひらや足裏は汗腺の密度が濃いので、影響を受けにくいのかもしれません」と話す。

 ▽ステロイド点滴で治療

 なぜ突然汗が出なくなるのかは、分かっていない。脳からの指令を伝える神経や汗腺は正常なため、命令を受け取る汗腺の受容体に問題があるのではないかと考えられている。症状に季節的な変動があることから、中里准教授は「体が暑さに慣れる暑熱順化と関係があるのではないか」と見ている。

 無汗症の検査は、試薬を塗って全身の発汗状態を調べる。他の病気が絡むこともあるため、それらを否定することで診断に至るという。治療にはステロイドの点滴を行うが、重症化すると複数回の治療が必要になることもある。一方、発汗機会を何度も与えることで自然に改善することもあり、普段から体を動かして汗をかくことが再発予防のためには重要だという。

 中里准教授は「無汗症は気付きにくいので、疑われたら皮膚科か神経内科を受診してほしい」と促している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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