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温泉は心身を癒やすと考える人は多いが、具体的にどのような良い作用があるのだろうか。近年、科学的な検証が進む温泉の健康効果とそのメカニズムについて、日本温泉科学会会長で、国際医療福祉大学大学院(東京都港区)保健医療学の前田眞治教授に聞いた。
温浴後の免疫機能増強の程度、水道水との比較
◇温まりやすく冷めにくい
温泉には、「温水による温熱作用、水圧などによる物理作用、含有成分による化学・薬理作用などがあります」。それぞれの効き目が、ヒトを対象とした科学的な実験で確認されているという。
温熱作用は、同じ温度の水道水と比べて強い。「41度で15分間の全身浴をした場合、水道水のグループ15人では入浴前より体温が約1度上がりました。一方、温泉のグループ(塩化ナトリウム温水、重曹泉、炭酸泉の各15人)では約1.5度上昇した上、入浴後の体温低下が明らかに緩やかでした」。温泉の成分により、体温を上げるための熱エネルギーが体に多く早く伝わるためだ。
こうした温熱作用は、大きな効能をもたらすという。「痛みの緩和、筋肉と関節のこわばり改善、血行促進、免疫機能増強などがあります」。例えば42度で15分間の全身浴をすると、2日後に免疫機能は15%増加。いずれも水道水の場合に比べ、有意な差が見られた。
◇血圧低下や美肌効果も
健康効果は他にも。「物理作用として、例えば水圧によりマッサージ効果やむくみ改善が得られます。含有成分による化学・薬理作用として、二酸化炭素や硫化水素による血管拡張作用で冷え性改善や血圧低下効果があります。マンガン、ヨードなどを含む酸性泉は殺菌作用によりにきび、アトピー性皮膚炎に有用とされます。弱アルカリ性泉は皮膚表面の角質や皮質を溶かすことで美肌効果を発揮します」
また、心のリラックス効果も証明されている。「入浴後の精神的ストレスは温泉入浴後に12%低下しました」
ただし、温泉の利用法を誤ると悪影響が出ることもある。前田教授は〔1〕脱水を予防するために水分を摂取する〔2〕酔いが冷めてから利用する〔3〕血圧変動を抑えるために手足にかけ湯をしてから湯船に入る―よう呼び掛けている。「飲用しても良い温泉もありますが、現地の注意事項を必ず守ることが大事です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/03/13 05:00)
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