硫化水素〔りゅうかすいそ〕 家庭の医学

 硫化水素は下水処理場や、廃棄物貯蔵タンクなどで有機物から発生し、嗅覚(きゅうかく)まひを起こすので、気づかないうちに意識障害や窒息になります。こうしたところでは酸欠もあわせて起こることが多く、被災者を救出しようとして2次災害が起こることがあります。したがって救助にあたっては、ホースやボンベで空気を供給するマスクを着用するなどの注意が必要です。これに加えてわが国では、火山の周囲や温泉などでも、高濃度の硫化水素で危険なところがありますが、がん予防になるなどとして積極的にそうしたガスを浴びようという人もいます。その結果、実際しばしば事故が発生し、過疎地の医療の圧迫要因になっている場合もあります。

(執筆・監修:帝京大学 名誉教授〔公衆衛生学〕 矢野 栄二)
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