治療・予防 2024/12/23 05:00
薬物療法が大きく進歩
~ぼうこうなどの尿路上皮がん(虎の門病院 三浦裕司部長)~
気温の上昇に応じて花粉の飛散量が増加するため、スギ・ヒノキの花粉症はこの時期、重症化する人が増えてくる。今年の春は特に飛散数が多いためか、症状の激化に耐え切れずに医療機関に飛び込む人が増えているという。専門家は「誤った情報や広告に飛びつく患者もいるので、十分注意してほしい」と話している。
花粉症対策でマスクを欠かせない人も多い
花粉症を含めてアレルギー性鼻炎に詳しい日本医科大学の後藤穣・准教授(耳鼻咽喉科)は、「これまで治療を受けていない人はもちろん、服薬などの治療をしていても、ひどくなった症状に耐え切れずに医療機関を受診する人も少なくない」と現状を説明する。後藤准教授によれば、花粉の飛散量と症状の重症度は正比例しないものの、飛散する花粉の量がある程度以上に増えれば、アレルギーの症状も激しくなるという。
◇内服薬でアレルギー反応抑える
ではどういう治療があるのか。まずアレルギー反応を抑える抗ヒスタミンと呼ばれる内服薬の投与だ。必要に応じて抗ヒスタミン剤や抗ロイコトリエン剤を組み合わせることで アレルギー作用を強め、鼻水やそれに伴うくしゃみ、目のかゆみなどの症状を軽減していく。
さらに、鼻詰まりに対しては、抗ロイコトリエン剤や抗ヒスタミン剤と血管収縮薬の合剤といった内服薬など症状に応じて複数の薬を組み合わせる。一方、鼻炎が激しければ炎症を抑える点鼻式のステロイド剤を、目のかゆみが強ければ抗ヒスタミン成分を含む点眼薬を内服薬に加えるなど、症状が激しい部位に応じての追加治療も可能だ。
後藤准教授は「薬局で買える市販薬で十分な効果が得られない場合は、医療機関を受診してほしい。さらに医師から処方されている薬で効果が不十分な場合は、次の予約日を待たずに受診し、症状を再評価して治療を見直してもらうことを勧めたい」と話す。
花粉症対策でもマスクを着ける
◇一般的治療ではない生物学的製剤
治療を見直しても十分な効果が得られない場合はどうするか。限られたケースにしか使えないが、ぜんそくや特発性慢性じんましんなどの治療に使われる生物学的製剤 を投入することもある。症状に応じて毎月1~2回医療機関で注射を受けることになり、効果は大きいと認められている。ただし、費用が高額であることや副作用を警戒する必要があるといった課題がある。投与できる医療機関も限られており、一般的な治療とは言い難い。
「他の治療ではどうしても症状のコントロールができない場合に医師が検討する治療法だ。ネットなどの情報で患者側から求めてくることもあるが、最初から始めることはできない 」
◇症状が出る前に始めるのが基本
花粉症の治療の基本は、激しい症状が出る前から、原因となるアレルギー性の炎症を抑えておくというものだ。後藤准教授も毎シーズン、飛散開始前から抗ヒスタミン剤などを処方し、患者に服用させている。ところが今年のように飛散数が多い場合は、平年よりも強い薬が必要になるため、途中で薬の処方を見直すことが必要になる。同准教授も「シーズン中は1カ月にごとに医療機関を受診し、症状と薬の効き目を確認するのが大切だ。そうすれば、症状が急変した際に飛び込まれても対応しやすい」とアドバイスしている。
◇舌下免疫療法
これら症状を抑える対症療法ではなく、アレルギー症自体を完治させたいと思う人も症状に悩まされる度合いに比例して増えるだろう。実際、アレルギー反応自体を適正化する「舌下免疫療法」という治療法は存在する。数年間にわたり継続的に毎日錠剤を舌の下で溶かしていくことで、花粉という異物に対する過剰な免疫反応を抑える。臨床試験では「治療終了後に3~5年間は症状を抑えることが期待できる」と報告されている。
ただ、この舌下免疫療法にはアレルギー症状の強い時期は開始することができないという問題がある。後藤教授は「この治療法はアレルギーの原因物質を少しずつ摂取させることで、免疫反応を正常化させる。多量の原因物質にさらされている時期には始められない」と説明するとともに、「スギ・ヒノキの花粉症の場合、花粉の飛散が収まる6月ごろから治療を開始できるので、希望する人はそれまで待ってほしい」と呼び掛けている。(喜多壮太郎)
(2023/03/23 05:00)
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