こちら診察室 アレルギー性鼻炎の治療最前線

自己流対処では症状悪化も
~標準治療が最適~ (後藤穣・日本医科大学耳鼻咽喉科学准教授)【第5回】

 花粉症の診断や治療では、受診率の低さが問題となる。有病率は増加傾向にあるが、医療機関で正しく診断を受けていなかったり、適切な治療を受けていなかったりする患者がおり、実際、軽症のスギ花粉症患者がどのような対策や治療を行っているのかを把握することは難しい。

 アレルギー性鼻炎に対して医療機関を受診せず、セルフメディケーションとして薬局で治療薬を購入するケースも現実的には多いだろう。一般用(OTC)医薬品として、最近では医療機関向けと同様な成分の医薬品(スイッチOTC)が複数市販され、有効性や安全性のバランスの取れた物も購入できる。

ドラッグストアの売り場

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 いわゆる風邪薬、鼻炎薬の中には古典的な第1世代抗ヒスタミン薬を含むものが多く、眠気、口渇、集中力の低下などが問題になることが多い。薬剤を長期間使用するような花粉症治療では、第2世代抗ヒスタミン薬を主成分とするスイッチOTCが推奨される。これらを使用しても症状が安定しない、改善しない場合には、スイッチOTCの鼻噴霧用ステロイド薬を併用するか、医療機関で鼻内所見を評価し、重症度や病型に応じた適切な治療薬の処方を受けるべきだ。セルフメディケーションで最も問題になるのは点鼻薬の連用だ。ここで言う点鼻薬とは、血管収縮薬が含まれた物を指し、局所点鼻ステロイド薬ではない。

 アレルギー性鼻炎で患者を悩ませる症状として鼻づまりがある。薬局で購入できる点鼻薬の多くには血管収縮薬が含まれており、連用することによって、かえって鼻づまりを悪化させることがある。これを”薬剤性鼻炎”と呼んでいる。決められた回数以上に乱用すると発生しやすい。血管収縮薬には即効性があり、短時間で鼻づまりが改善するため、患者はどうしてもこのような点鼻薬に頼りがちだが、一度薬剤性鼻炎になると使用を中断してもなかなか元に戻らず、鼻づまりの治療に難渋するケースが多い。薬局で医薬品を購入する場合には、用法用量を守って正しく使用しなければならない。

 さまざまな医療情報、健康情報がメディアから容易に入手できる時代になった。「何かの食べ物で花粉症が治りますか?」、「サプリメントやヨーグルトなどで症状が軽くなりますか?」という質問を受ける場面が多い。結論から言えば、通常、われわれが処方する医薬品よりも効果が高いと証明されている食品やサプリメントなどは存在しない。医薬品の場合、安全性や有効性を科学的評価法で客観的に検証し、厚生労働省の承認を得ている。

 しかし、食品などは安全性に問題がなくても、有効性は不確かなケースが多いように思う。医薬品の場合は、ある程度の割合で有効性がなければ薬と認められないが、食品の場合は、少人数に効果があっても大部分の患者に効果があるかのような錯覚を生じているのではないかと推測する。ある特定の人に効果があっても、自分に効果があるのかを見極める必要がある。民間療法などについても同様な考え方で、効果と負担額などのバランスを正しく捉える必要がある。

写真はイメージ

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 また、花粉症治療というと「注射1本で治る方法がある」と信じられている時代があった。具体的には、ステロイド薬の筋肉注射によって症状を緩和するというものだ。ステロイド薬は局所、内服、注射の順に効果が強くなると言われている。ステロイド薬の作用部位は多岐にわたり、正しく使えば非常に有力な治療薬であるが、問題となるのは副作用に関しても多くの部位に発生することだ。従って、アレルギー疾患に限らず多くの疾患で副作用の少ない投与方法が試みられ、薬の形も改良が進んできた。

 花粉症治療に対するステロイド薬の筋肉注射は、ガイドラインでは推奨されていない方法であり、一般的に実施すべき手段ではない。筋肉注射の有効性を証明した科学的論文が少ないことや、副作用の長期化も多数あり、標準的な治療法とは正反対の方法と考えるべきだ。

 アレルギー性鼻炎は適切に診断し、ガイドラインに準拠した標準的な方法から治療を始めることが望ましい。(了)


後藤穣・日本医科大学耳鼻咽喉科学准教授

後藤穣・日本医科大学耳鼻咽喉科学准教授

【後藤 穣(ごとう・みのる)】
現職 
日本医科大学耳鼻咽喉科学 准教授
日本耳鼻咽喉科学会専門医、専門研修指導医
日本アレルギー学会 常務理事、指導医・専門医
経歴    
1991年日本医科大学医学部卒業
2004年日本医科大学耳鼻咽喉科学 講師
2011年日本医科大学耳鼻咽喉科学 准教授
2014年日本医科大学多摩永山病院 病院教授
2018年日本医科大学付属病院 本院復帰

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