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がんなどの新薬の登場は大きなニュースとなり、患者の期待が高まる。創薬に伴う臨床試験には巨額の費用がかかることがネックとなっていた。製薬企業、イーライリリーのエグゼクティブバイスプレジデント兼最高情報・デジタル責任者のディオゴ・ラウ氏がインタビューに応じ、「人工知能(AI)などのテクノロジーを駆使することで、創薬のスピードアップを図り、患者の利益につなげる」と抱負を語った。
イーライリリー最高情報・デジタル責任者のディオゴ・ラウ氏
◇患者の活動性、正しく測定
製薬業界は新薬の臨床試験について約70年間、同じ方法で実施してきた。試験に参加した患者に「活動的だったか」「眠りに落ちるようなことがあったか」などの質問をし、答えを得ていた。それは患者の記憶に頼るもので限界もあった。ラウ氏は「従来の臨床試験は患者が『どのように感じたか』という報告に依拠していた。テクノロジーの進化によって、患者の活動性を頻繁にかつ正しく測定できるようになった」と話す。
副作用の有無は、臨床試験における重要な点だ。頭痛があったかどうかを訪ねても「2回くらい頭痛を感じたが、正確には覚えていない」といった答えが返って来ることも少なくない。それがデジタル技術を使うことで正しい記録として残り、新薬の研究や開発に役立つ。
「私たちが作った薬剤を購入し、利用する。しかし、実際に使ってみてどうだったかなどのフォローアップはされていない。多くの情報を得ることで、将来は、しっかりフォローアップできるようになるだろう」
◇人間は難しい症例に専念
デジタルのマシン(機械)はデータを基に、安全性に関わるリポートなどについて一貫性をもって作成することが可能だ。ラウ氏は「人間の方はそこで生まれた時間を使い、より難しい症例に専念できる」と強調する。
日常生活においても、健康デジタル機器は広まりつつある。体温や血圧などを簡単に図れるスマートウオッチを着ける人も増えてきた。
「私たちが用いるデバイスはウオッチではない。リストバンドで1カ月間、ずっと着けてもらう」
スマートウオッチとは違って、数値を表示するディスプレー機能がない分、バッテリーは長持ちする。
より安価でスピーディーに薬を創る。それは、統計的なデータに基づけば製薬企業のコストも社会的なコストも減ることにつながる。最も大事な点は患者にとってのメリットだ。
◇大量の情報を処理
ラウ氏は「デジタル技術の活用により、多くの臨床試験を実施できる。私たちは、これを大きなチャンスだと捉えている」と話す。
米食品医薬品局(FDA)による新薬の承認が早まれば、治療の選択肢が広がり、患者にも朗報となるだろう。「20年前はスーパーコンピューターを使わないと処理できなかった大量の情報が、現在はツールを正しく使うことで処理できるようなった」
ラウ氏は「FDAが求める情報を速やかに提供する。それにより、承認が早まることを期待している。患者はより早くそれを入手できるから」とし、日本の厚生労働省についても「そうあってくれたらよい」と言う。
(2023/05/12 05:00)
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