インタビュー

テクノロジーで創薬スピード化
~患者にも大きなメリット~ イーライリリー責任者に聞く

薬の服用者の体調管理などに役立つアプリ「ニューページ」

薬の服用者の体調管理などに役立つアプリ「ニューページ」

 ◇治療に役立つアプリ

 臨床試験に登録された患者がきちんとルールを守るとは限らない。毎日の服薬、あるいは1週間に1回の服薬を指示されていても、現実の世界では人間の行動は変化する。服薬をやめてしまうこともある。

 年に数回しか来院しない患者への問診は、記憶に頼らざるを得ない。100%正確であることは難しい。副作用に関して医師が「何回くらい頭痛の症状がありましたか」と尋ねても、患者側が報告をちゅうちょしてしまうケースも考えられる。

 しかし、スマホのアプリなどによって患者の状態を記憶し、医師に自動的に報告されるシステムがあれば、報告に漏れがないため治療に役立つ。すでにそうしたアプリは存在する。イーライリリーが日本で運営する「ニューページ」はその一例だ。がん治療薬の利用者の症状を記録し、担当医師との会話もできる。

 ◇注射剤容器の保存にも活躍

 AIは今、問題点を指摘されながらも可能性を秘めているとされる。

 「『シンプル』なケースであれば、AIとマシンが人間のやっていることをモデルにして、優れた効果を上げることができる」

 注射剤を保管する容器の一つがバイアルだ。製薬企業にとって注射剤の効果を保つことが欠かせない。コンピューターでさまざまな角度から画像を撮り、万全を期す。ラウ氏は「500万人分のバイアルを安全に保管することができる」と自信を示す。

 日本の医療機関におけるCTやMRIなどの画像診断装置の導入数は欧米に引けを取らない。関係者が指摘する問題は、患部の画像を読影(きちんと判断すること)できる専門医が少ないことだ。AIが大量のデータを基に学習することを前提に「優秀な医師の読影を除けば、AIの方が多くの画像を正確に読み取ることができるようになるだろう」と指摘。「例えば、マシンラーニング(学習機能)を使って患者の思いや考え方を医療に生かす。それは非常に複雑と考えていたが、マシンの方がリポートを書くのに長けている」と続ける。(鈴木豊)

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