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毎日の温泉浴が、高齢者のうつ病を予防する可能性がある―。九州大学病院別府病院(大分県別府市)がアンケート調査を基に報告をまとめた。
高齢者のうつ病は認知症を併発することも多く、深刻な問題だ。同院内科の山崎聡講師は「入浴習慣を見直し、効果的な入り方を実践してほしい」と話す。
毎日の温泉浴でうつ病予防に期待
◇長時間続く温熱効果
同院が2011年、無作為に抽出した65歳以上の別府市民を対象に、温泉の入浴習慣と病歴についてアンケートで尋ねた。回答が得られた約1万人のデータを解析したところ、毎日の温泉利用とうつ病の病歴が少ないことの間に関連があることが分かった。
高齢になると心身の機能低下による病気の増加に加え、定年退職や家族など身近な人の死による喪失感など環境も変化するため、うつ病になりやすいと考えられている。また加齢に伴う運動不足、眠りを導くメラトニンホルモンの分泌低下などの理由から、質の良い睡眠が取りにくくなることもうつ病の原因になる。
毎日の温泉が高齢者のうつ病予防に効果的と考えられる理由について、山崎講師は「温熱作用で身体が温まり、心身の緊張がほぐれてリラックスするため睡眠の質が上がることが最大の理由でしょう。家庭のお風呂の場合、温熱効果は30分程度しか続きませんが、温泉の場合は約12時間持続すると言われています」と説明する。
◇血圧測定と水分補給を
さらに温泉に含まれる硫化水素ガスにはリラックス効果があることや、湯に漬かりながらの他の利用者との交流も、うつ病予防につながると考えられている。遠方から温泉地に来る場合には、会う人も食べ物も違うという環境の変化が精神の安定に良い影響をもたらし得るという。
毎日の温泉利用が難しい場合は、家庭の入浴でも睡眠の質を上げる効果的な入り方がある。就寝の1~2時間前に入浴し、38度のぬるめの湯なら25~30分、42度の熱めの湯なら5分程度、湯に漬かって体温を少し上げることがポイントだという。半身浴でも効果があり、約40度の湯に30分が目安だ。
寒い季節を中心に、血圧の急激な変化などにより高齢者が風呂で意識を失い溺水する事故を防ぐため、政府が湯温41度以下、10分までを目安にするよう推奨しているのに比べると、入浴時間が長めだ。入浴前に家族に声を掛ける、冬場は脱衣所を暖めておくなどの注意も大切になる。
「温泉入浴の前後も血圧の急激な変化に注意し、入浴前後の血圧測定と小まめな水分補給をお勧めします」
ただ、うつ病の診断を受けている人や不安を感じる人は、環境の変化や人との接触が逆効果になることもあるため、まずは精神科医に相談する。
山崎講師は「健康寿命を延ばし、精神的にも元気でいたい人は今日からでも入浴習慣を見直し、さらに可能であれば温泉を利用してみてください」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/08/06 05:00)
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