治療・予防

日本人に多い下咽頭がん
~気付いた時には進行も(国立がん研究センター中央病院 吉本世一頭頸部外科長)~

 酒を飲むと顔が赤くなり、飲酒の習慣がある人で発がんする可能性が高い―。過度の飲酒を最大の原因とする下咽頭(かいんとう)がんについて、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)の吉本世一頭頸部外科長に話を聞いた。

頭頸部の各領域

 ◇男性で圧倒的に多い

 喉は咽頭と喉頭から成り、咽頭は高さにより上・中・下の三つに分けられる。咽頭がんは、がんができた部位により上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんと診断される。中でも下咽頭がんは、患者数が最も多く、男性が圧倒的に多い。最大の発症原因は飲酒だ。

 初期はほとんど症状がなく、食事の飲み込みにくさや喉に違和感などが生じる頃には、がんが進行していることも。リンパ節に転移しやすく、首のしこりを自覚し初めて分かる場合もある。

 吉本科長によると、高齢化の進行に伴い、下咽頭がんの患者数は年々増えている。進行してから見つかった場合、咽頭の切除を余儀なくされるケースが多く、腫瘍が大きくなるほど治療に伴う機能低下も大きくなる。

 治療法は、抗がん剤を併用する放射線治療、手術など。下咽頭全摘出となった場合は、小腸の一部を移植して食べ物の通り道を再建するが、近年は失った発声機能を代替音声で補う治療などにより、社会復帰する人も増えてきた。

 ただし、咽頭周辺は食事や発声などに関わる重要な機能が集まっているため、腫瘍が大きくなる前の早期発見が重要だ。「お酒で顔が赤くなる人で、飲酒の習慣がある場合は、耳鼻科での検診と胃カメラの検査を定期的に受けましょう」

 内視鏡治療に光明

 これまで下咽頭がんは早期発見が困難とされてきたが、内視鏡技術の進歩で非常に小さながんの発見も可能になった。早期の下咽頭がんなら、鉗子(かんし、刃のないはさみ状の器具)を口から挿入し、がんを摘出できる。全身麻酔が必要だが、体への負担は少なく、飲み込みや発声機能を温存できる。

 「ステージ0の5年生存率は9割、ステージ1、2で8~9割です。初期段階で治療を始めれば生存率は高く、機能の温存も期待できます」

 ただ、以前と同じペースで飲酒を続ければ再発のリスクは高い。再発予防には節酒または断酒が欠かせない。飲酒をやめてもアルコールで受けたダメージはしばらく残るため、「再発のリスクを自覚し、飲みたくなったらノンアルコールビールで楽しむなど、お酒との付き合い方を考えることが大切です」と吉本科長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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