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年代を問わず根強い人気のヨガ。しかし、あぐらをかいたり、足を大きく広げたりといったポーズは身体への負担が大きく、実はけがをする人も多いという。
こうした患者を多数診てきた整形外科医の井上留美子医師は、身体の解剖学を学んだヨガ講師と共に「整形外科ヨガ」を開発した。「中高年でも安全で簡単に、無理なく継続できるヨガの独自プログラムです」と話す。
キャットアンドカウをアレンジした「骨盤揺らし」
◇呼吸法で動ける体に
ヨガのけがで多いのが腰や膝、股関節の痛みなど。慣れない体勢を取り、頑張り過ぎることもあって余計な負担がかかり、けがをしてしまう。
井上医師は、呼吸により力みをなくし、体の柔軟性が生まれればけがの予防につながると考えた。ヨガの動作が、運動器障害の予防や改善に用いる運動療法と共通の効果が期待できる点に着目。「年齢を重ねても動ける体づくり」を目的に、12種類のヨガポーズと3種類の呼吸法(完全呼吸、片鼻呼吸、腹式呼吸)を組み合わせた、安全に続けられる独自プログラムを完成させた。
中でも重要視しているのが呼吸法だ。「シニア世代は胸郭が硬くなりがちですが、呼吸法の習得により、背筋が伸びてきます。椅子に座りながらでもいいので、まずは呼吸法の基本である腹式呼吸を使って腹横筋を鍛えるトレーニングをマスターしましょう」
腹式呼吸はおなかに手を当てて鼻から息を大きく吸っておなかを膨らませた後に、鼻から息を吐きながらおなかがぺちゃんこになるまでへこませる。4秒で吸って4秒で吐く動作を1~2分継続できたら、6秒、8秒と吸って吐く時間を伸ばしていく。
呼吸法は時間や場所を気にせず継続できることも利点。「こつをつかめば他の呼吸法もできるようになります。まずは3カ月間継続することが大切です」
◇気分も前向きに
12種類のヨガポーズのうち、ヨガの代表的なポーズである、両手を床につき、四つんばいの姿勢で行うキャットアンドカウをアレンジした「骨盤揺らし」は、椅子に座って行う。息を吸いながら骨盤を前に押し倒し、顎を上げた後、息を吐きながら骨盤を後ろに倒して顎もゆっくり下げる。呼吸を止めないことで骨盤が無理なく動き、背骨全体が動いていく。
椅子に寄り掛かり、けがのリスクの少ない状態でタオルを用いてふくらはぎを伸ばす運動も、取り入れたいポーズの一つだ。これらの手法は井上医師が代表となって組織した「整形外科ヨガ事務局」が公開している動画「整形外科ヨガチャンネル」で見ることができる。
整形外科ヨガは井上医師が所属する聖マリアンナ医科大学(川崎市)スポーツ医学講座で、運動効果などの効果検証が進められている。
ヨガ教室などを通じた社会参加の場にもなっており、高齢者が陥りやすいネガティブ思考の改善効果も期待されている。「運動療法は自分で取り組むことが大事です。趣味などを続けるための手段として、シニア世代こそヨガの活用を」と井上医師は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/09/24 05:00)
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