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アルツハイマー型認知症の原因とされる特殊なタンパク質「アミロイドβ(ベータ)」は、発症する20年前から脳への蓄積が始まっているという。この段階を軽度認知障害(MCI)といい、時々物忘れが起こる程度で、日常生活は通常通り送ることができている。
メモリークリニックお茶の水(東京都文京区)の朝田隆理事長は「MCIは早期発見が重要です。周囲が気付いたら、様子を見るのではなく必ず受診を促してください」と呼び掛ける。
知的刺激が効果的
◇認知症に進行する恐れ
MCIの主な症状は物忘れだ。例えば、直近の約束事を忘れてしまったり、話したばかりの電話の内容を忘れてしまったりする。ところが、記憶力以外の注意力や推理力、言語能力は正常なままであるため、加齢による物忘れと区別がつきにくく見過ごされやすい。
「MCIは認知症ではありませんが、放置すると1年で5~15%が認知症に進行するとされる、いわばグレーゾーンです。しかし、早期に対処することで、16~41%は改善が期待できるとされています」
診断は、本人や家族への問診と併せて、「MMSE」や「改訂長谷川式」といった認知機能検査を行う。必要に応じてMRIなどの画像検査も加え、「アルツハイマー型以外の認知症やうつ病などがないかを調べて、総合的に診断します」。将来的には、本人や家族が簡便にMCIのリスクを判断できる方法も導入される予定だ。
◇知的刺激が有効
問題は、受診を促す方法だ。自尊心が傷つくことなどを理由に、本人が受診をためらうケースは少なくない。そのため、症状に気付いてから受診までに2~4年を要し、進行するケースも考えられる。「家族に受診してほしいときは、自分の物忘れが心配で受診したいから同行してほしい、脳ドックを一緒に受けようなど、病院に行く前向きな理由を作ることがポイントです」。受診する診療科は、精神科や脳神経内科。日本老年精神医学会のホームページからも検索できる。
MCIは現在、承認された治療薬がないため、同クリニックでは、大人数で行うゲームや、全身運動で筋肉を刺激するなどの認知機能トレーニングを実施している。「考えて記憶し判断する知的刺激がMCIの改善に有効です。普段から趣味の時間を持ったり人としゃべったりすることが、日常的にできる最大の予防でありリハビリなので、積極的に取り組んでください」と朝田理事長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/11/11 05:00)
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