治療・予防

スマホで頸髄症を早期発見
~手指の動きから自動判定(東京医科歯科大学大学院 藤田浩二講師)~

 手指の細かい動きが悪くなるという症状が特徴的な頸髄(けいずい)症。進行すると、歩行障害や排尿・排便障害が加わることもある。東京医科歯科大学大学院(東京都文京区)運動器機能形態学の藤田浩二講師らは、スマートフォンで動画撮影した手指の動きから、早期の段階で頸髄症の有無や重症度を自動判定するシステムを開発した。

計測方法

 ◇進行すると手術の効果低い

 頸髄症は「頸椎(けいつい)と呼ばれる首の骨の中を通る神経(脊髄)が圧迫され、手足のしびれや動かしにくさが出る病気です」。頸椎やその周囲組織の変形は加齢で起こりやすくなるため、頸髄症は高齢者に多い。特に日本人は脊髄が通る管が狭いため起こしやすいとされる。

 初期症状は手指に現れることが多い。「手指がしびれたり、箸遣い、ボタンかけなどの細かい作業がしにくくなったりします。多くの場合、ゆっくり進行し、5年、10年かけて悪化します」

 治療は「早期に発見できれば、薬などを用いた保存療法で対処可能です。ある程度進行した場合も、手術すれば良くなることが多いです」。一方、進行してしまうと手術をしても予後が悪い。「回復まで約3倍の時間がかかるといわれ、早期発見が重要です」

 ◇10秒間撮影して送信

 ただし、診療で早期に発見される人は少ないようだ。「初期症状はあまり強くないため、受診が遅くなりがちなことや、診察に専門的な知識が必要なため、進行してから診断されるケースが多いのでしょう」

 そこで藤田講師らは、重症化する前の早期発見を目指し、簡便で精度が高い検出法を開発した。スマホで手指をグーパーさせる動きを10秒間動画撮影し、そのデータをWi―Fi(ワイファイ)で解析センターに送ると、コンピューターが自動的に判定するシステム。結果はデータ送信から1分程度で出る。

 磁気共鳴画像装置(MRI)などで診断が確定している頸髄症患者22人とそうでない17人を対象に判定能力を調べた結果、発症の有無と重症度を高い精度で判断できることが分かった。藤田講師は「まだ研究段階ですが、2~3年以内に実用化できるようにしたい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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