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透析患者で糖尿病、喫煙習慣などがあると、脳、心臓などの動脈が細くなったり、詰まったりする動脈硬化性疾患が起こりやすくなるが、歯周炎もそのリスク因子になることが最近の研究で分かった。東京医科歯科大学大学院(東京都文京区)歯周病学の水谷幸嗣講師と三上理沙子助教に話を聞いた。
糖尿病や喫煙習慣、加齢などがある透析患者に歯周炎があると動脈硬化性疾患を起こしやすい
◇重症ほど生存率低下
歯に付着した細菌の塊(プラーク、歯こう)が原因となって歯肉(歯茎)に出血などの炎症が生じる病気が「歯肉炎」。さらに進行して、歯を支える骨が溶け、歯がぐらぐらしたり抜けたりする病気が「歯周炎」。歯肉炎と歯周炎を合わせて歯周病と呼ぶ。歯周病は、30代以上の日本人の3人に2人がかかっているとされ、多くの全身性の病気と関係する。
透析患者では歯周病がより高率に認められる。「私たちは、透析患者の歯周病が重症であるほど、全身的な炎症の程度が強くなり、生存率が低くなると報告しています」と水谷講師。歯磨きなどが不十分な人は、十分な人に比べ、3年後の死亡率が約3倍高くなることも分かったという。
◇MIA症候群に焦点
歯周病があると、なぜ透析患者の予後が悪くなるのか。三上助教らは最近、透析患者に特徴的な「MIA症候群」に焦点を当て検討した。MIA症候群は、低栄養と全身の慢性炎症により、動脈硬化性疾患が発症・進展しやすくなっている状態。透析患者の生存率を低下させる要因になると報告されている。
透析患者254人で、全身的な炎症亢進(こうしん)、低栄養、動脈硬化性疾患といったMIA症候群の三つの要素の有無を歯周病の程度別に調べた。その結果、重度の歯周炎の人はそうでない人に比べ、要素を多く持つ人の割合が高く、より動脈硬化性疾患を起こしやすい(あるいは既に起こっている)状態にあることが分かった。特に全身的な炎症亢進と低栄養が強く関係していた。
「透析患者が歯周炎を治療することは、MIA症候群、特に炎症や低栄養を改善し、動脈硬化性疾患の発症・進展を抑える方策の一つになる可能性があります。歯科医師の指導の下、歯磨きをきちんと行うと透析患者の生命予後が良くなる可能性もあります」と水谷講師は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/02/23 05:00)
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