治療・予防

便秘が慢性腎臓病のリスクに
~腸内環境の悪化が影響か(米テネシー大学ヘルスサイエンスセンター 住田圭一准教授)~

 便秘はよくある症状の一つで、軽く見られがちだ。しかし近年、慢性的な便秘は、さまざまな病気のリスクを高めることが分かってきた。寿命を縮めるとの報告もある。便秘慢性腎臓病(CKD)のリスク因子になる可能性を指摘する、米テネシー大学ヘルスサイエンスセンター腎臓内科の住田圭一准教授にオンラインで話を聞いた。

CDK発症率。便秘があるとCKDの発症リスクは高まり(左)、便秘の重症度が高まるほど発症率も高まる

CDK発症率。便秘があるとCKDの発症リスクは高まり(左)、便秘の重症度が高まるほど発症率も高まる

 ◇新たな「国民病」に

 CKDとは、腎臓の障害または腎機能の低下が3カ月以上続いている状態。高齢化の進行で糖尿病高血圧症などの生活習慣病が増加していることが背景にある。成人の約8人に1人がCKDと推定され、新たな「国民病」と位置付けられている。

 怖いのは、初期に症状がほとんどないため、進行してから気付くことが多いということ。「治療せずに放置すると末期腎不全(腎臓がほとんど機能しなくなった状態)に至り、人工透析、腎臓移植などの腎代替療法が必要になります。CKDは、心臓病や脳卒中などの心血管疾患の発症や進展に関わることも分かっています。ですから腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにつながります」

 ◇重症の便秘ほどリスク大

 便秘にもなりやすい。住田准教授らは米国に住む約350万人を対象に、便秘の有無・重症度別にCKDの発症や進行具合を調査した。

 その結果、便秘があると、CKDの発症リスク、悪化速度を上げるリスク、そして末期腎不全の発症リスクが明らかに高くなることが分かった。その傾向は重症の便秘ほど強かった。

 「便秘は、CKDのリスク因子でもある可能性が示されました。腸管に内容物が停滞することによる有害物質の過剰産生、便秘に伴う腸内細菌の乱れなどが、CKDの発症や進展に影響していることが推測されます」

 便秘の治療によるCKD発症、進行を予防する研究も進んでいるという。「たかが便秘、されど便秘です。最近は便秘治療薬の開発が急速に進んでいますから、慢性的な便秘でお困りなら、早めに医療機関で相談されることをお勧めします」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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