治療・予防

骨折の連鎖に注意
~適度な運動、骨密度測定を(兵庫医科大学病院 楠川智之病院助手)~

 加齢などで骨の量が減り強度が弱まる骨粗しょう症では、転んだ程度のわずかな力が加わっても骨折してしまう脆弱(ぜいじゃく)性骨折の危険がある。一度骨折すると、第二、第三の骨折につながる「ドミノ骨折」の可能性があり、注意が必要だ。兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)整形外科の楠川智之病院助手に実態を聞いた。

中高年はラジオ体操や散歩などが推奨される

 ◇短期間でもドミノ骨折

 骨粗しょう症の推定患者数は1590万人とされるが、自覚症状が無いこともあり、実際に治療を受けている人は少ないという。

 だが、「腰が痛い」「背中が丸くなってきた」「背が縮んだ気がする」などの自覚症状があれば、「いつの間にか骨折」と呼ばれる、背骨がつぶれるように骨折する圧迫骨折かもしれない。骨折しやすい部位は背骨(脊椎・椎体)の他に、脚、手首、肩のいずれも付け根など。これらの部位を骨折すると日常生活に支障を来し、外出が困難になったり、寝たきりになったりするケースも少なくない。そうなればさらに全身の骨が脆弱化し、同じ部位や他の部位の骨折につながりかねない。

 「私たちの研究では、骨粗しょう症による椎体骨折患者227人のうち、最初の骨折後3カ月という短期間に約14%がドミノ骨折を発症、生活の質(QOL)は著しく低下していました」と楠川助手。なお、この研究では約8割の患者が骨粗しょう症の治療は受けていなかったという。

 ◇閉経後女性は特に注意

 ドミノ骨折のリスクを下げるには、骨粗しょう症の予防が必要になる。カルシウムやビタミンDなどを含む食事、適度な運動といった生活習慣の見直しは大前提だ。

 「若い人であれば、ヨガやピラティスなどで体幹を鍛えたり、筋力トレーニングを行ったりして筋肉を蓄える『貯筋』をしておきましょう」

 一方、中高年については「ラジオ体操や散歩などに加え、かかりつけ医や整形外科医で年1回の骨密度測定をしてもらうのがよいでしょう。特に閉経後の女性は、骨の代謝を調節する女性ホルモンが低下するため、骨粗しょう症になりやすいことが分かっています。骨粗しょう症と診断されたら、専門医の下で適切に薬を使いながら骨折予防に努めましょう」と楠川助手はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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