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高い枕を使っている人は、若年性脳卒中の引き金となる「椎骨動脈解離」を起こしやすいことが分かった。研究を行った国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)脳神経内科の猪原匡史部長に聞いた。
枕の高さ別でみた特発性椎骨動脈解離の患者とそれ以外の患者の割合
◇3分の2が原因不明
椎骨動脈は首の骨の中を通り、脳に血液を送っている動脈。その一番内側の内膜に裂け目ができ、そこに血液が流れ込んで膨らみ、血流が障害されるのが椎骨動脈解離だ。
「首から上の動脈に起こる脳動脈解離の中で最も多く、日本人では約9割を占めます。典型的な症状は首、後頭部の痛みです」。痛みだけなら薬物療法で治まる場合もあるが、しばしば脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血)を併発することが問題だという。「50歳以下に起こる脳卒中の主要な原因が椎骨動脈解離と考えられます」
椎骨動脈解離は、交通事故などによる首の外傷や、カイロプラクティックなどで首を強くひねった時に起こり得る。しかし、「3分の2は原因が明らかではなく、根本的な治療法や予防法がないのが現状です」。
◇硬い枕も発症割合高く
猪原部長らの研究グループは、起床時に発症した特発性椎骨動脈解離の患者が習慣的に高い枕を使っていることに着目した。2018~23年に特発性椎骨動脈解離と診断された患者53人(症例群)とそれ以外の病気の患者53人(対照群)に、枕の高さや硬さについてアンケート調査を行った。
その結果、高さ12センチ以上の枕を使っている人は、症例群34%に対し対照群が15%でオッズ比2.89倍、15センチ以上では症例群17%、対照群1.9%でオッズ比10.6倍だった。高い枕の使用と発症には強い関連があり、枕が高くて硬いほど発症リスクが高まることが分かった。
特発性椎骨動脈解離の約1割が高い枕に起因すると考えられる。このため、猪原部長らは江戸時代に使われた枕にちなんで「殿様枕症候群」と名付けた。「椎骨動脈は首の狭い骨の中を通っているため、高い枕を使うと首が屈曲して過剰な力がかかり、裂けるきっかけになり得ます。高い枕は使わないようにしましょう」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/08/21 05:00)
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